2019-10-09

●お知らせ。VECTIONによる「弱いアナーキズム」三部作が公開されました。基本的には西川アサキさんが書いた草稿を、四人による共同編集で仕上げました。以下、「本文への誘い」的な抜粋。

https://vection.world/

●①「日本人の不毛な働き方を激変させる?「同時編集」を私が薦める理由」より。

《筆者はここ数年、現状にパッチを当てるのではなく、全然違う社会制度を色々と妄想する集団(Vection https://vection.world/)を作り、週末ネット上で集まっては議論しています。いわば「俺らの考える理想の地球連邦政府」を設計する遊びです。

が、筆者にとっては投票に行く以上に真面目な政治活動でもあります。》

●②「政府は何%までクラウドファンディングだけで運営できるのか?」より

●政府のクラウドファンディング

100クラウドファンディング化政府は「(1)どうしても減らせない仕事」に属する社会的に必要な仕事を「どこまで」維持できるのでしょう?》

《ここでわざわざ「どこまで」と書いているのは、「できる・できない」のふた通りではなく、恐らくどれくらいできるのか?という比率が最も重要な問題だという点を強調しておきたいからです。》

《もともと「政府」というのは、そもそも市場では解決しにくいサービス(予算がつきにくい、社会的・長期的には必要だが個人的・利己的には不要なタイプの企画)を提供するのが目的で生じたという建前です。ですから、そうした事柄については、やはりエリートや選ばれた人々が、無私の精神で公のために尽くすことを期待すべきではないでしょうか?》

《そのような事業をここでは「市場の外部」と呼んでおきましょう。クラウドファンディングも市場(人気)による決定の一つですから、その外側ぐらいの意味です。》

《そもそも「「選ばれた人」は市場の外部を「集団」よりもうまく決められる」という前提はどの程度正しいのでしょうか? 》

《とても賢い個人(もしくは少数者)と、集団のどちらが、どういう局面なら「より賢い=市場の外部、長期的に必要なこと」を見つける力を持つのでしょう?》

《たとえば、明らかな国力差が調査で判明していたにもかかわらず日米開戦を防げず、戦争中も補給不足で兵士を無駄死にさせた「選ばれた人」には、少なくともその局面では「長期的視野で市場の外部を選択する能力」が欠けていたような気もします。》

《では、うまい具合に市場の外部を仕分けつつ、クラウドファンディング化の比率や予算配分を見つける仕組みはあるのでしょうか?》

●③「ミラーバジェットから弱いアナーキズムへ」より。

●ミラーバジェット

《「ミラーワールド」というのは、いわば拡大された『ポケモンGO』みたいなもので、世界に実際に存在するありとあらゆるオブジェクトの「ネット版=ミラーワールド」を作り、それを皆で共有して、色々役に立てようという構想です。》

《一方、「ミラーバジェット」は、いわばそれの「国家予算」版のようなものです。ミラーバジェット制度では、国民は「(選挙など)散発的なイベントごとの投票権」の代わりに、一人一人が「ミラーバジェット専用の暗号通貨100兆円分」を与えられます。日本を例にすると、最初から一億二千万人分の暗号通貨ウォレットがあり、国民それぞれのデジタルウォレットに「(日本の国家予算のうち一般会計分である約)100兆円」分の暗号通貨が入っているわけです。これを「ミラーバジェット」と呼びましょう。》

《そして、そのミラーバジェットを、どのような政府企画に投資するのか、各個人が勝手に決めます。その値はブロックチェーンを通じて自動集計され続け、ある時刻での「政府予算」が連続的に決定されていきます。それによって、予算の決定権を誰も持たず、しかも間に人が入らないで自動的に予算案が決まっていくのがポイントです。》

《もちろん、ミラーバジェットは、「ミラー」なので、現実の予算配分とは別物です。》

《現行の選挙制度で議員を選出した場合、その議員を通じた有権者の意思決定は、多くのケースで、最終的に「どの企画にどれくらい予算を投じるか?」という形へ落とし込まれます。だとすると、選挙というのは「議員を選ぶというインターフェース」を使った「特殊な(国民による)予算作成」です。》

《そう考えると、ミラーバジェットは、暗号通貨やウォレットという点からアイデアを得ていますが、お金というより、「投票用紙」がバージョンアップした、「ストリーミング予算投票」みたいなものだといえます。》

●弱いアナーキズム

《同時編集やミラーバジェットが、暴力革命、業界団体による圧力、議員を国会へ送ることを通じた民意の反映、といった古典的方法論に比べてどれくらい優位なのかは正直まだ分かりません。しかし、それがブロックチェーンAI、同時編集など、様々な技術基盤がないと、そもそも構想すらできなかった(技術的基盤によって新たに可能になった)「まだ試されていない大きな物語」の一つであることは確かでしょう。》

《「政府のクラウドファンディング化」や「ミラーバジェット」は恐らくアナーキズムの子孫です。そこで目指されているのは、やはり本来、民衆のためにある制度が、自己目的化して人々を圧するものとして振る舞うのを防ぐことですし、そこに現れるのは、やはり一種の限定的な「無政府」だからです。》

《ただし、「政府のクラウドファンディング化」にはアナーキズムのような「迫力」「自由のために死ね」と迫るような気合いはありません。ただ、GoogleDocsで文書を同時編集してみたら、と言ってみるだけ、その延長線上にあるものです。》