●U-NEXTで『憂鬱な楽園』(ホウ・シャオシェン)をなんとなく観てみたら、すっかり引きずり込まれて、夢中になって最後まで観てしまった。
なんとも濃厚な、まさに九十年代の映画という気配。九十年代につくられた、ある種の傾向の映画を観ることから得られていた様々な経験の感触のあれこれが、この映画を観ていることで濃密にたちあがってきた。
具体的、あるいは客観的な影響関係云々の話ではなく、あくまでぼく自身の経験という次元でのことだが、九十年代に、黒沢清青山真治北野武などの映画を---というか、多くのVシネマを、主にレンタルビデオで---観ることを通じて感じ取っていた(その感触や肌触りを受け取ることで自分自身の生を鼓舞していた、その時代、その年齢を生きていた自分自身のありようと切り離せないような)、時代の感触が、きわめて濃厚に凝縮されて、次々にたちあがってくるという経験。
あー、これな、この感じな、しびれるな、と。