2025-02-02(日)
⚫︎小学館がやっている「P+D BOOKS」というレーベルがあることを今まで知らなかった。ちょっと古めの昭和の小説を、ペーパーバック版と電子版とで安価で販売するというシリーズ。10年前からあるらしい。
高校生の時、日野啓三という作家が割りと好きだった。とはいえ、読んでいたのは高校の時だけで、それ以降は全く読まなくなってしまったが(日野啓三は、芥川賞で保坂さんを激推しした人だが、それはぼくが読んでいた頃より十年くらい後の話だ)。それで、その当時好きだった『抱擁』という小説のことをなんとなく思い出して、ちょっと読み直してみたいと気まぐれに思い(こういうことはよくあるので実際に読むとは限らない)、アマゾンで検索してみたら、定価600円というちょっと信じられない値段の本が出てきて、安すぎて不安になり(なんか胡散臭いのではないか、と)、え、この「P+D BOOKS」ってなに ? 、と調べてみたら小学館がやっているレーベルだった。今時、文庫でも600円はなかなかないし、講談社文芸文庫から出ていたら確実に倍以上の値段になるだろう。
で、どんなものかと試しに買ってみた。簡易な造本と、藁半紙みたいな紙質だが、読むのにはなんの支障もなさそう。というか、軽いし、読みやすそう。「解説」とか、そういうのはなし。
正直、読みたいと思う作品がそんなにたくさんあるというわけではないが、中上健次の『鳳仙花』とか田中小実昌の『香具師の旅』とか小島信夫の『別れる理由』とかもある。『別れる理由』は、6冊に分冊されていて、一冊どれも1000円以下だ(一巻目だけ935円で、それ以外は全て715円、税込)。今、ざっとアマゾンのマーケットプレイスで調べたら、講談社から出ている単行本の3冊セットで12000円とか13000円というくらいの値段がついている(ただ、バラで買うとけっこう安い)。水声社から出ている「小島信夫長編集成」を定価で買うと、一冊9000円×3冊になってしまう。4510円で『別れる理由』が全部揃うのはちょっとびっくりだし、これだったら多くの人が読めるのではないか。逆に、小学館はなぜこの値段で出せるのかと思ってしまうが。