⚫︎マニアではないし、マニアになる気もないが、ミステリの、マニアックな傾向にある分厚い小説で、再読したいと思う作品(『虚無への供物』や『匣の中の失楽』や『夏と冬の奏鳴曲』や『哲学者の密室』など)、それと、未読だが読んでおきたい作品(『暗黒館の殺人』や『美濃牛』や『有限と極小のパン』や『鵼の碑』など)がそれなりの数、本棚にあるのだが、自分の人生の残り時間なのかで、それらを読む時間をどうやって作り出せばいいのかと考えると途方にくれる。「忙しい」などとは無縁の生活をしているとはいえ、歳をとると「無駄な時間」を作るのがけっこう困難になる。
しのごのいわずに読み出してしまえばいいとも言えるが、しかしそうすると、確実に「別の何か」をする時間が圧迫される(読みたい本はミステリだけじゃないし、というかミステリではないものの方が圧倒的に多いし関心としてもそちらの方に重きがあり、かつ、本を読む以外にもすべきことはある)。もういい加減いい歳なのだから、ミステリの、(さらっと読めるようなものは別として)時間を取られるマニアックな大長編みたいなやつは諦めて、気にするのをやめた方がいいんじゃないかとも思っているだが、そうこうしているうちにまた新たなタイトルがそこに追加される。
『堕天使拷問刑』(飛鳥部勝則)。ミステリ好きのYouTuberたちの間で「幻の奇書」として評判であることが前から気にかかっていたタイトルだが、絶版で、古本も高騰していて、図書館にも置いていないので、読みようがなく、どうせ読めないのだから仕方ないと諦められていたものが、今年になって早川文庫から復刊され、千数百円で買えるという状況になり、手が届く、読める、となると気になるようになってきて、それでもなるべく気にしないように努めてきたのが、あるとき、ふと魔がさして買ってしまったのだった。
(サブカル的でマニアックなものが気にかかってしまう性癖はもういい加減何とかならないものかと思うのだが、なかなか何ともならない。)
(マニアックだと評判とされているものでも、実際に読んでみるとそこまででもないかなあと思うこともけっこう多いのだが、懲りないのだ。)
