2026/06/24

⚫︎メモ1。中井久夫「荒川修作との一夜」に書かれた、荒川が語ったとされるシャガールのエピソード。荒川は、南仏のシャガールのアトリエに起居していた時期があったという。

《「シャガールはね」と彼は語った。「朝早く、アトリエに来て、鉄のパレットを取り出す。九十四歳の彼が鉄のパレットだぜ。そこへ色を盛り上げ、カンバスにどしどし色を塗る。たいへんな仕事量だ。そして、夕焼けがアトリエの窓を染めると、部屋中をくまなく掃除し、雑巾をかけパレットをきれいに洗って、さあ帰ろうという。ある時、見かねてオレがやると言ったら、じいさんなんと言ったと思う ? 俺を殺す気か、これをやっているから俺は今まで生きているんだとね、で、またごしごしさ」。いい話であった。私の大好きなライナー・チムニクの童話『クレーン男』のように、日々の力を信じて愚直に生きること―。私は頭の中で、病なお残る若い身空の荒川になり、床に近いソファに横になって、立ち働く老ユダヤ人画家を見上げてみた。毎日ここにいたら、自分の中の何かが快癒してゆくだろうなと思った。日本の精神科医が治せなかった一青年を癒して画家にしたシャガールの偉大が身にしみた。》

⚫︎メモ2。『子どもの宇宙』(河合隼雄)をパラパラみていて行き当たった谷川俊太郎の詩の孫引き。これは、自分がやりたいと思っていることにちょっと近い気がする。起承転で終わって「結」がない、開かれて不安定な三部構造(もしかすると続きがあるかもしれないが)。この詩は『そのほかに』という詩集に収録されているという。

たんす 谷川俊太郎

 

たんすの右の引出しに

かもじと櫛がつまってる

たんすの左の引出しは

プラスティックのさじばかり

まんまん中の引出しは

しっかり鍵がかけてある

 

いちばん上の引出しは

参謀本部の地図が占め

二番目の引出しの中

あふれるばかりの名古屋帯

三ばんめの引出しは

何故か見事にからっぽで

いちばん下の引出しを

開ければとび出すねずみの仔

 

ひらきを開いたその中は

どことも知れぬ町はずれ

ほこりだらけの夕暮に

まりをついてる女の子

てんてん手まりてん手まり

ひとつつくたび年をとる

(追記。写真を追加。検索したら地元の図書館に『そのほかに』があったので借りてきた。6月25日。)

⚫︎川。