夢の話

●夢の話。高校か中学かの教室。一人で残って勉強している。外は暗い。蛍光灯の光。教室の後ろの方で、黒板に背を向けて、清掃用具入れに向かい合うように座っている。教科書や参考書を参照しつつ、数学の問題を説いているのだが、時間をかけている割に、まったく進んでいない。問題はまだまだ沢山残っていて、そのことを考えると気が遠くなる。ふと気づくと、いつの間にか、教室にもう一人男子学生がいる。しかしその学生は同じクラスの者ではなく、ぼくは彼が誰なのか、どうしてここにいるのか知らない。電話がかかってくる。(教室に備え付けのもので、携帯ではない。)数学の教師からで、今まで解けたところまででいいから、問題集と解答を持って数学準備室まで来い、とのこと。しかしぼくは、数学準備室がどこにあるのか知らない。(というか、ぼくはその学校についてほとんど何も知らないのだった。)それに、見知らぬ男子学生一人を残したまま教室を出てしまってよいのだろうか。とりあえず廊下に出てみると、廊下は既に真っ暗で、校舎には人の気配がなく、ぼくが、なんとなく数学準備室がそのあたりにあるだろうと(何故か)思い込んでいる、中庭を挟んだ向かいのもう一棟ある校舎の窓は、どこにも灯りが灯っていない。ぼくは、灯りが灯っているところが数学準備室だろうと推測していたので、戸惑う。もう一人いる男子学生に数学準備室について聞いてみても、彼は何も言わない。荷物をここに置いたままで教室を離れるのはためらわれたが、数学教師の言葉が絶対的なものに思われ、ノートと問題集だけを手にして、真っ暗な校舎のなか、とにかく数学準備室を探す事にする。何の根拠もないが、数学準備室は向かいの校舎にあるはずだと思い込んでいるので、渡り廊下を通って向かいの校舎へゆく。向かいの校舎へ行くと、そこにはまだ学生も沢山いて、灯りも煌煌と灯っていて、にぎわっていた。放課後ではなく、休み時間のようだった。階段を降りて来た中年の女教師に呼び止められ、この前のあの本はもう読みましたか、と聞かれた。ぼくはその教師のことも知らないし、「あの本」が何を指すのかも分らなかったが(本当は、なんとなく思い当たるところがあるような気もするのだったが)、数学準備室を一刻も早く突き止めなくてはならないという強迫的な気持ちにかられていて、適当に、いや、いろいろあって、まだなんです、と適当にお茶を濁して立ち去ろうとするが、女教師はさらに話をつづける。また、あの皆さんたちと出掛けましょう、今度はもうちょっと朝早く、六時前には出た方がいいでしょう、出がけに「コロコロコミック」を買っておきたいし。ぼくは、六時前だと「コロコロコミック」を売っている店はまだ開いていませんよ、と言いたいのだが、言えないまま、女教師の話を聞いている。早く数学準備室を探さなくてはいけないのに、と焦りを募らせつつも、数学準備室を探さなくてもいい口実が出来たことに、ホッとしてもいるのだった。