●本が出ました。ギャラリーでも、買ってくれた人が何人かいました。自分の本にサインするということを、初めて経験しました。あと、「ユリイカ」のスピルバーグ特集(http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%B9%A5%D4%A5%EB%A5%D0%A1%BC%A5%B0)に、「位置をもたない二種類の経験/『A.I.』と『マイノリティ・リポート』の余白に」という文章が載っています。スピルバーグ論というよりも、スピルバーグを見ながら考えたことについてのエッセイ、という感じです。
●一日ギャラリーにいて、暇な時にギャラリーに置いてあった「Review House」という雑誌をパラパラ見ていたら、冒頭に青木淳悟のインタビューが載っていて、その最後に、青木淳悟の本棚とかいって、青木淳悟おすすめの五冊の本が取り上げられていた(庄野潤三とか深沢七郎とか)。その五冊の最後に、大鋸一正の『フレア』という小説が挙げられていて、おおーっと思った。
この小説は、あまり注目されていないと思うのだけど、読んだのは随分前で細部までは憶えていないのだが、女の子の一人称で描かれていて、何というのか、その思考の流れというのか、意識の繋がり方と世界との距離感が絶妙に変で、絶妙に気持ちが悪くて、その気持ち悪さの印象がすごく強く残っている。作者がどこまで狙ってやっているのかは、いまいちよく分らないのだが、読んでいて立ち眩みがするようなこの独自の気持ち悪さは、他にはちょっとみたことがないというような質をもつ気持ち悪さなのだった。そして、青木淳悟も、ぼくが感じたのと同じようなことを書いていて、おおーっ、と思い、やっぱそうだよね、あれ絶対変だよね、と、自分の感覚に対して、同意を取り付けられたように思ったのだった。