●『プリデスティネーション』(スピエリッグ兄弟)をDVDで観た。グレッグ・イーガンが誉めているのをみかけたので。
http://gregegan.customer.netspace.net.au/ESSAYS/NISF/NISF.html
(イーガンは主に、最近のSF映画がいかにダメかという話をしている――「her」「エクス・マキナ」「インターステラ―」をディスっている――のだが、良い作品もあるといって『プライマー』『アップストリーム・カラー』『プリデスティネーション』『アンダー・ザ・スキン』を挙げている。四本のうち二本がシェーン・カルース監督作だ。)
まず、原作がハインラインの「輪廻の蛇」だという情報だけで、知っている人にとってはネタバレなわけだし、原作にない要素も多々あってすごく工夫しているのは分かるものの、その「原作にない要素」が、どのような形で収斂するのかということも、原作のネタを知っていれば大体わかってしまうので、「面白がる」というよりも「辻褄が合っているかどうか確認する」みたいな見方になってしまう。初めて観るのに「あ、ここで伏線張った」とか、「あー、そこをそういう風に処理しているのか、成程ね」みたいになってしまって、作品に入り込めなかった。
思ったのは、この物語はタイムパラドックス(卵が先か、鶏が先か)についての話というよりも、「このわたし」(わたしの同一性)とは何か、ということに関する寓話(というか謎かけ)のようなものなのだなあということだった。そのような意味でイーガン的な主題なのかな、と(『プライマー』もそういう話だと言えるし)。
●この映画は『シックスセンス』並みにネタバレ厳禁で、しかも、具体的な内容にちょっとでも触れようとするとたちまちネタバレになってしまうのだけど、もし予備知識なしに観ることが出来たら、相当驚くのではないかとは思った。ぼくも驚きたかったな、と。
(イーガンが誉めたり貶したりしている七本の映画のうち、『エクス・マキナ』と『アップストリーム・カラー』が日本では公開されていない。『エクス・マキナ』は、人工知能ブームでもあるし、きっとそのうち公開されるのではないかと思うのだけど、ぼくはぜひ『アップストリーム・カラー』を公開してほしい。「グレッグ・イーガン絶賛」とかでは「売り文句」として充分ではないのだろうか。)