●10月から大学で講義をするので、参考のために時間がある時に「講義動画」を探して観ている。下にリンクした動画もそのひとつ。50分程度の時間のなかにとても面白いストーリーが構築されていて見事な講義だと思う(とはいえ、聴衆がこの流暢さに細部まできちんとついていくためにはある程度の前提知識---講師の本を少しは読んでいる、とか---が必要だと思う)のだが、ぼくにとって新鮮だったのは、倫理的な問題(ここでは「トロッコ問題」)を考えるために可能世界を用いているところ。こんなアプローチがあるのか、と驚いた。
(動画の最後にチラッと写る参考文献表をみると、トロッコ問題の可能世界アプローチは、講師本人が書いた『論理パラドクス』という本からきているようだ。そして、この本をぼくは持っている。しかし最後までは読んでいなかった。本をひっぱりだして、パラパラみると、確かにかなり後ろのほう---最終章---の、86「二重効果のジレンマ1~医師の決断」87「二重効果のジレンマ2~運転手の決断」88「二重効果のジレンマ~解決編」というところに、動画で語られていたことがより詳しく書かれていた。)
(この本にはさらに、このやり方のオリジナルとして、筆者の98年の小説作品「再生倫理学」---『たましいの生まれかた』所収---が示唆されていた。三浦俊彦は90年代には小説家でもあった。)