2023/04/26

●『水星の魔女』。この世界から争いがなくなることはないとしても、みんなが「ガンダム」を見れば、必要のない争いは随分少なくなるのではないかといつも思う。今回は主に地球拠点のテロリスト視点の話。

テロリストにはテロリストの事情があり、テロリストであるしかない必然性があり、テロリストの正義がある。それは、正義の相対性のような弱い言葉で表せるようなことではなく、「関係の絶対性」とでもいうべきものとして、解くことのできない瘤として、どうしようもなくある。ノレアのニカに対する怒りは、正義の相対性に対する関係の絶対性が発する怒りだと思われる。

今回初めて登場したオルコットという人物は、元々はテロリストと敵対する側にいて、それどころか、テロリストに家族を殺されてさえいるのに、その怨嗟をこえて、今ではテロリストの側にある。運命によって、存在そのものが矛盾としてあるしかないような人物。「ガンダム」にはほとんどいつも、このような人物が登場する。

テロリストに家族を殺されながらもなおテロリストと共にあるオルコット、同じアーシアンであり、孤児という類似した境遇でありながらも和解不可能であると思われるニカとノレア。この二つの人物配置だけでも、この世界の解くことのできない複雑さが表現されている。

●『水星の魔女』では、『ガンダムUC』のフル・フロンタルの位置にいる人物が二人いる。デリングの計画を横から奪い取って自らの目的(いまのところ謎)に使おうとしているプロスペラと、ベネディット・グループの力を奪い取って世界の構造を変革しようと目論むシャディク。プロスペラは、フル・フロンタル的というよりも碇ゲンドウ的かもしれない(しかしプロスペラの方がゲンドウよりずっと賢いしずっと怖い)。それに対して、「UC」で言えばバナージとミネバでもあり、「ウテナ」で言えばウテナとアンシーでもある、ミオリネとスレッタというペアがいて、彼女たちがどうするのかが問題となる(「ウテナ」とは逆で、花嫁であるミオリネがウテナで、スレッタがアンシーになるのか)。