⚫︎VECTIONの会議で話題になった記事(西川さんが見つけた)。なんか最近、隙があれば騙そうとしてくる人が多過ぎるよな、という例。
ウェルビーイング業界(?)では有名な調査結果で、ある一定の額までは、収入が増えれば増えるほど、その人の幸福度は収入に比例して上がるが、一定の額を過ぎる、収入が増えてもあまり幸福度は上がらない。まったく上がらないわけではないが、その上昇率は著しく低下する、というものがある。上の記事は、そのような常識化された考えに対して、そんなことはない、収入は上がれば上がるほど幸福度も上がるのだ、と反論するものだ。確かにグラフを見れば、幸福度は収入の増加に対して一直線で上昇しているように思われる。
データとかグラフとか見せられると、なんとなく納得させられてしまうのだが、「グラフ」というものには気を付ける必要がある。その作り方一つで、嘘はついていない、確かに正しくデータを反映してはいる、が、間違った印象を与えることができる、というものを容易に作ることができてしまう。
上のグラフでは、縦軸が幸福度で、横軸が収入となっている。確かに、収入が上がれば上がるほど幸福度も比例して上がっているように見える。ただ、目盛のふり方が問題だ。縦軸の幸福度は、4.0、4.5、5.0、5.5…、と、等しい間隔でとられている。しかし、横軸の収入は、15.000、30.000、60.000、120.000…、となっていて、等間隔ではなく、1目盛りにつき倍々で増えている(n×2で増えている)。つまり、グラフが一直線に上昇する形になるように(それを目的化して)、基底そのものがあらかじめ操作されている。「え、そんなことする」と思わず声が出てしまう。これは明らかに意図的に「誤った印象」を持たせるように加工している。確かに「嘘はついていない」が、明らかに「騙そう」としている。
このグラフを、縦軸も横軸も等間隔で目盛をふるとすれば、下のような形のグラフになるはず。つまり従来の「常識」通りの調査結果になったということだ。GIGAZINEのような、比較的リテラシーが高いと思われるメディアでも、こんな簡単なことに騙されてしまうのか、とも思う。
ある形=図が現れたとき、その形を生んでいる基底=地の方にも注目する、というリテラシーは必須だと思う。
上のグラフが表現するもう一つのことは、収入の格差があまりにも大き過ぎるため、一望できるグラフにまとめるためにはこのような形にするしかなかった、ということだ。目盛を等間隔に揃えると、どこまでも横に長く長く続くグラフになってしまう(下のグラフは、本当はもっともっともっと右に長く伸びる)。圧縮することで、あまりに莫大である格差が隠蔽されてもいる。
正確にはこんな感じか(↓)。これがおそらく、データを的確に表現するグラフの形だろうと思う。収入(横軸)の莫大な差に対して、幸福度(縦軸)の差の小ささが表現されている。