2025-07-29

⚫︎両親は、選挙があれば必ず投票に行く人たちだが、今回の参議院選挙は投票しなかった。理由は政治的なことではなく「暑さ」だ。実家から投票所まで、(80歳代後半である)両親の足で歩くと片道で20分以上はかかる。この暑さの中、20分以上かけて投票所まで行って、投票して、また20分以上かけて歩いて帰ってくるのは無理だ、と両親が判断した。決めたのは両親自身だが、「行く」と言っていたらぼくも多分止めていただろうと思う。それくらいやばい気候だ。

(せめて、投票所が閉まる午後8時ギリギリくらいの、多少は涼しくなった時間に行くべきと言っただろうが、両親の日課からすれば、午後6時前には夕食で、午後7時を過ぎれば完全にまったりタイムなので、その時間に外出するのはとても億劫で難儀なことだろう。)

(気候がいい時期ならちょうど良い散歩コースで、二人で投票に行って、帰り道で買い物によってくる。)

そうなると電子投票ということを考えるが、以前、VECTIONで電子投票について調べたことがあって、分かったのは、技術的にかなり難しいということだった。現状の選挙のやり方はすごくうまく考えられていて、「自由意志(誰にも強要されない)」と「匿名投票(誰が誰に投票したのか誰にもわからないし、調べようもない)」を、ほぼ完璧に実現している。投票所には監視人がいて強制できないし、投票箱に投票用紙を入れた瞬間、投票者と投票用紙の関係は物理的に断ち切れら、後追いすることができなくなる。

(社長から「うちの社員は○○先生に投票するように」と圧をかけられたとしても、組織的に同調圧力が形作られたとしても、「はい、そうします」という顔をしてぜんぜん別の人に投票してもバレる心配はない。)

電子投票だと、誰が誰に投票したのか後追いするのが技術的に可能になってしまうし(もちろん、後追いできないような仕掛けを作るのだが、その仕掛けは破ることができてしまうだろう)、地元の権力者みたいな人が有権者たちを監禁して、それぞれ個人のデバイスを監視し「俺の見ている前で投票しろ、○○先生に投票したことが確認できた奴から解放してやる」というようなことができてしまう。そして、できてしまうことは必ずやる奴が出る。

(監禁しないまでも、「今、俺の見ている前で投票しろ」という圧をかけることはできてしまう。「お前、投票しなかったな、そういうつもりなんだな、それでいいんだな、よく覚えておくぞ」みたいな更なる圧が…。)

このあたりのことが技術的にクリアできない間は電子投票は危険なので、現状の投票制度のままということだろう。なるべく気候のいい時期に選挙をしてくれ、というしかない(かなりめんどくさいが、比較的すごしやすそうな日を狙って期日前投票とか)。ただ、今でも、重度な障がいのある人には郵便投票が認められているので、その枠をもうちょっと広げてもいいのではないかとは思う(とはいえ、郵便投票には電子投票と同じ問題点と危険があるので、あまり大きく枠を広げるわけにはいかないだろう)。

だとしても、いつかはこれらが技術的にクリアされるときは来るはずだ。

⚫︎炎天下でも日に何本も演説をこなし、厳しい選挙戦を走り抜くだけの「元気がある人」だけが政治家になり得るという、そのことが根本的な間違いのようにも思われる。疲れやすくて、国会でいつも眠ってしまうような人こそ貴重な政治家かもしれないのだ。とはいえ(たとえば集合知のような形で)「元気のない人の声」を響かせるためには「技術」による媒介が必須で(「素」だと常に「元気な人」が勝ってしまううので)、そのような意味でも、技術は政治に大きな影響を与える重要な問題だと思う。