普段、曜日を基準にして行動していないから、曜日の感覚がほとんど無くて、ついついゴミを出し忘れたりすることも、しばしば。でも、駅前のカメラ店でビデオテープを買い、それが入った袋を手にぶら下げたまま、駅裏のやや寂れた感じの辺りを、普段よりもゆっくりとした速度で、どこというあてもなくふらふら歩いていると、ああ、日曜の午後だなあ、という実感が強く湧いてきたりする。
普段よりゆっくり歩く、というのは意外に難しくて、意識してやっていても、ちょっと気を抜くと、すぐにもとの速度になってしまう。今日みたいに、本当に何の目的もない、散歩という目的すらない、気まぐれでぶらっと道を外れてみる、というときにだけ可能な速度。
さっき、角のところで、ボブ・ディランの有名なアルバム(タイトル忘れた)のジャケット写真そっくりに腕を組んで歩くカップルと擦れ違う。わざと真似してポーズをとっているとしか思えないほど、あの感じが出てた。本当は、何かを見るとすぐ別の何かをレファランスとして思い浮かべる、というのはものの見方として良くないことなのだけど、あまりにもそっくりだったので仕方がない。
ここ2、3ヶ月、あまり生産的でないことで忙しく、精神的に余裕がなかったので、こんな感じで歩くのは久しぶり。決して、時間が全くなかった訳ではないけど、余裕がないと、時間があっても、なんとなくせかせかしていて、結局、何かをしてしまう。
この辺りに住み始めて、もう10年以上になる。ずっと同じ場所に住んでいるのは、この辺が好きだからでは別になくて、ただ、不便を感じないし、動くのが面倒だからってことなんだけど、今日、久々にふらふら歩いてみて、結構この辺りの感じが好きなのかもしれない、と思った。都心ではないせいか、この辺りは空間の使い方がルーズというか無駄が多い。建物の建ち方なんか相当いい加減だし、古くてぼろぼろの建物がかなり残っていて、平気でそこに人が住んでいたりするし、無駄な空き地があったり、意味不明な場所に大きな木が生えていたりとか、変な形の中途半端な畑があったり、とにかく整理されてない。道が入り組んでいて、どこへ向かうのか分らない、細くて蛇行した道が多く、それに坂道が多くて、複雑に上下の段差がある。そのせいか、道路と家との間に、三角形の無駄な土地が出来てしまい、そこだけ鋪装されずに土が露出していて、雑草が生え放題だったり・・・。
終戦後すぐのバラック建てのような建物が残っている、と思ったら、なんとそこが食堂になっていて、数人のおばちゃんの客がたむろしていたのには、ちょっとびっくりした。こんなの今まで知らなかった。すげー、なんで残っていられるんだ、こんなのが。
いくら道が入り組んでいるとはいえ、10年も住んでいるとさすがに迷うことはないのだけど、それでも今日は半分マジで迷いかけた。まあ、意図的に方向感覚を狂わせるような、変な道の方へ、変な道の方へと歩いていったからなんだけど。おかげでいろいろと新しい発見があった。
帰り際に、サイレンを鳴らして、猛スピードで走るパトカー2台と擦れ違う。何があったんだ。一体。
夕方から夜にかけてアトリエで制作。ようやく形になりつつあるような気がするけど、まだまだ確信は持てず。形になりつつある、というのは、逆に言えば、自分の作品がこの程度でしかないってことが、見えつつある、ということでもあるので、キツイところですね。