04/12/27

●冬の、日のまだ出切っていない、夜のうちに降りてきた冷えた空気が地表に積もったままの早朝。夜通しにぎわう繁華街の裏にある細い一方通行の道路は灰色のトーンに統一されたような印象で、人通りも車もまばらで、空気も動かない。ビルの地下駐車場へとつづくゲートを塞ぐ、閉じられたいかめしく重たい鉄の扉は、手で触ると切れそうなほどに冷たさを蓄積しているのだろうと思われる。その鉄の扉の下のわずかにある隙間から、小さく動くものが頭を出し、やがてするっと身体を隙間から抜け出す。顔の下半分と、二本の前足の下三分の一ほどが白く、残りは真っ黒な、胴の長さと比べると足が短すぎる小さな猫だ。猫は、隙間から抜け出ると、身をすくめるような姿勢で一瞬だけ静止し、すぐに身体を伸ばし、短い四本の足でつつつっと地面を蹴って、一方通行の狭い道路を横断してゆく。灰色のフリーズした風景を、隙間から這い出て来た黒いものが一瞬で横切ってゆく。勿論、人は歩いているし、まばらながら車もはしっているのだけど、猫の動きが、(それとの対比で)それらのものをまるで止まっているかのように見せてしまうのだった。