●『攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX The Laughing Man』『攻殻機動隊S.A.C 2nd GIG Individual Eleven』をDVDで。(両方合わせて300分以上!)長い時間すこしも飽きずに見せられるという意味では凄いし、確かに良く出来てはいると思うけど、どちらも『Solid State Society』に比べると、ちょっと落ちるという感じ。『The Laughing Man』は、笑い男のビジュアルは確かに面白いけど、インテリ層を釣ろうとする知的な参照項がちょっとミエミエな感じで、しかも、それにしては超優秀なハッカーが参照しているのが今時サリンジャーっていうのも、どうかと思う。(白水社ブックスの方で、村上春樹訳の方ではない、というのがミソなのだろうか。やはりあれはハードカバーではダメで、ペーパーバックでコートのポケットにねじ込めるようなやつじゃないと感じが出ない。)オリジナルの不在がコピーを増殖させるとかいうことを台詞として言わせてしまうのもどうかと思った。『Individual Eleven』は、「ストーリーコンセプト押井守」というオープニングのクレジットを観た時にちょっと嫌な予感がしたのだけど、案の定、運命の出会いと偽史と革命という(ゼンキョートー的な)ロマンチックなお話で、つまり、またいつもの押井守の図式と美学とをみせられるというわけで、それはこのシリーズとしてはあきらかに後退であるようの思う。この古くさい図式に従っている限り、若手のスタッフが細部でがんばってみても、限界があるのではないだろうか。志は高いけど力量が不足している若い女性の首相(美人)を9課の課長が後ろからフォローするみたいな構図も、そこはかとなく「おやじ臭(おやじ的妄想というか、おやじ的ナルシシズムというか)」が漂うし、タチコマの反逆と自己犠牲みたいな話も、確かに「観ている時」は泣けるけど、後になってから何だか白けてしまう。どちらの作品も、あるイノセントな魂の発露が、現実の社会の機構のなかに呑み込まれてしまう、という話として纏められてしまうところも弱いと思う。さらに、どちらの作品も、参照している「現実の事件」があまりにも露骨に直接的に使われ過ぎていて、もうちょっと作品として消化=昇華してほしいと思う。(とはいえ、300分もの間まったく退屈せずに観られたのだから、ネタの仕込み方や組み立て方など、とても良く出来ていて、これだけの高品質の商品をきちんと仕上げられるジャパニメーション業界はまったく大したものだとは思う。)この二作を観る事で、『Solid State Society』が、前の二作を踏まえつつもそれを乗り越えた高い達成を示していているのだということが改めて分り、素晴らしいと思うのだった。