●昨日書いた書評を、一晩寝かせてから推敲してメールで送る。編集者から、百字ほどオーバーしているので、ゲラの段階で調整してもらうかもしれないと返信がある。いや、オーバーしているのは分かっているのだけど、どうしてもそれ以上削れなかったのでそのまま送ってみたのだが、結局問題を先送りしただけになった。電車のなかで、本当に「わーん、わーん」という感じで声を出して泣いている男性がいた。
ブニュエルの『自由の幻想』をビデオで見た。晩年のブニュエルのきわめてゆるーい映画なのだが、警視総監が、緊急の約束があると言ってバーに行き、しかし待ち合わせの相手はまだ来てなくて、そこに一人の女性が現れ、警視総監はその女性に、あなたは四年前に亡くなった妹とそっくりです、驚きましたと話しかけている時に、死んだはずの妹からバーに電話があり、今日の深夜に死体安置所に来い、そこで死の秘密が明かされる、とかなんとか言っていて、その言葉通りに深夜の死体安置所に警視総監が行って、もう閉まっていると言って制止する管理人に、私は警視総監だ、と、無理矢理になかに入り込んで、棺桶をこじ開けようとしているところを、管理人が通報した警察官に取り押さえられ、私は警視総監だ、君たちは自分の行いを後悔するぞ、とか言って抵抗するのだが結局拘留されてしまうのだが、警視総監を捕まえた警察署の署長だが誰だかが、「自分は警視総監だ」と名乗る男がいると警視総監に電話すると、そこにはまた別の警視総監がちゃんといて、「その男は私に似ているか」「全然似ていません、好感度ゼロです」「その男を私のところへ連れて来なさい」などという会話が交わされ、警視総監(2)のところへ警視総監(1)が連れて行かれると、二人は何故か旧知の知り合いのように、「最近どうだ、太ったんじゃないか」「お互い様だ、飲み食いは慎まないと」とか言い合って(二人は別の俳優によって演じられていて、全然似ていない)、親しげに酒を酌み交わすというエピソードがあって、この「いつの間にか二人に分離している警視総監」のエピソードが、妙に引っかかって、気になるのだった。