●喫茶店で粘って、作家論の直しをしていた。自分の書いたものをじっくりと読み返す。細かい修正点はあるものの、基本的な問題は最後の結論部のみだと思う。その方向性も少しずつ見えて来た。
●『くらげ』(池田将)をDVDで。これで池田さんの現在までの全作品を観たことになる。最初は、ちょっと格好つけたコンセプチャルな作品かと思ったが、だんだんゆるい感じになってゆき、最後にはぐだぐだになって終わる。(ゆるいとはいっても、妙に真剣で青臭い感じで、この「青臭さを恐れていない」ところに感心する。ぼくが若い頃は、もっとスカしていて、青臭いことは恥ずかしいと思っていた。中年になってはじめて、青臭くてもいいじゃんと思えるようになった。ぐだぐだだけど生真面目というか、真剣にぐだぐだしている。)この、ぐだぐたな感じが開放感に繋がるラストがすごくいいと思った。この映画では、テープに録音された「ある日の会話」(このテープがなければ、この作品はないと思う)が延々と流れるのだが、最初これは、深夜、友人の部屋で、酔っぱらって話しているのかと思っていたのだが、途中で子供の声が入って来たりするので、昼間、おそらく窓を開け放った開放的な部屋で話しているのだろうと思われる。この人たちは、こんな話を、昼間っからシラフでしてるんだ!、とすると、それだけですごいと思った。そのような場=関係があるということが何よりも貴重なのだと思う。最後のぐだぐだな感じも、きっと酔っているわけではないのだろう。それだけですごいというより、それこそがすごい。
(この映画を観ているとどうしても、実際に池田さんにお会いした時に聞いた、父親の「鈍痛」の話を思い出してしまう。ここには書けないけど。)
●池田さんからは、自作のDVDだけでなく、池田さんが気になっている他の作家の作品や、後輩の作品などもたくさん送っていただいていて、まだそれら全てを観たわけではないけど、ぼくには池田さんたちのグループ(という言い方で良いのか?、池田将、柏田洋平、川部良太、刀祢平喬)の作品が、飛び抜けて面白いように思う(いや、『にほんかいいもうとといぬ』という、とんでもなく凄い作品もあったけど)。同じ大学の、学年も年齢も近いところに、飛び抜けた作品が集中するということが本当にあるんだなあと思い、ぼくなどにはそれがひたすら羨ましい。柏田さんと刀祢平さんの作品はそれぞれ一作しか観てないけど、川部さんは三作(『家族のいる景色』『ここにいることの記憶』『そこにあるあいだ』)、池田さんは五作(『灰色の魚』『えび』『くらげ』『UFOさま』『亀』)を観せてもらって思うのは、一作ごとにグレードアップしているというか、その作品をつくることで確実に何かを掴み取っていて、それが次の作品につながっていて、最新作が最も面白いものになっている、というのがすごいということだ。つまり、たまたまラッキーで面白いものが出来てしまったということではなく、これからも面白いものをつくってゆく人たちなのだと思う。