●『ロボティクス・ノーツ』3話。順調に、面白くなりそうな感じに展開している。最初、とても狭いところにぽつりぽつりとコマを置いてゆくところからはじまって、色んな要素が徐々に結びつきつつ網の目状にひろがってきている(ガンダムネタを妙にフジテレビ関連と結びつけようとし過ぎている感じがちょっと…、と思うけど)。『中二病でも恋がしたい!』とあわせて、今期は期待できそうなアニメが二本もあってうれしい。
それなりにこまかくチェックはしているつもりだけど、今年に入ってから今までは面白いと思えるアニメがほとんどなくて、アニメに関して欲求不満の状態がつづいていた。『境界線上のホライゾン』の二期目も、最初は「おっ」と思ったけど4、5話はくらいになるとさすがに飽きた、というか、ついていけなくなった(一期も4話5話くらいで飽きた)。今年になって最後まで通して観たのは『氷菓』くらい。『氷菓』は、ちょっと他にないような作品で、悪くはないと思うけど、でも、これが面白いというのは結局、米澤穂信の原作が面白いということで、アニメとしては「うまく移し替えた」という感じでしかないとも言える(でも「クドリャフカの順番」のエピソードに限っては原作を超えていたと思う、アニメは何故か文化祭を描くと活き活きしてくる)。テイストとしては『這いよれニャル子さん』とか『さんかれあ』とかは嫌いじゃないけど(ホラー+マニアック)、つづけてちゃんと観るというところまで面白いとは思えなかった。
氷菓』も『中二病でも恋がしたい!』も京都アニメーション制作で、今、京アニがちょっと「きてる」感じなのかもしれない。『らき☆すた』とか『けいおん』みたいなものをどうしても受け入れられないぼくとしては、このような路線の変更はとても喜ばしい。キャラクターにちゃんと厚みと複雑性があり、変化し得る存在になっている(それが必ずしも、普通の、人間的なリアリズムの道理には従ってはいないとしても)。正直、『氷菓』を京アニが制作すると聞いた時は嫌な予感しかしなかったのだが、それはまったくの杞憂だった。『中二病でも恋がしたい!』には、『機動戦艦ナデシコ』並みの複雑な記号操作を伴う作品にまで発展してほしいと期待しているのだけど(4話はほんとにすばらしかった)、それは期待のし過ぎだろうか。
●以下は、「貨幣レジームの変革とベーシックインカムの持続可能性」(井上智洋)の要約のつづき。最後の三分の一。
●貨幣発行益はベーシックインカムの有力な財源として考えられる。ベーシックインカムとはすべての個人に無条件に、一律な最低限の生活費を給付する制度。利点はさしあたって、1.貧困対策の包括化、2.制度の簡素化、3.景気の活性化、が挙げられる。
●1.貧困対策の包括化について。現状その中心的役割は生活保護が担っているが、生活保護は救済に値する者としない者とを選別せねばならず、その選別はしばしば失敗する。選別のためのコストもかかる。賃金を得れば受給が減るため労働意欲が抑制される。受給者に屈辱的な烙印が押されかねない。生活保護があるから失業しても安心だと思えるようにはなっていないのでセイフティーネット足りえていない。
ベーシックインカムはアンチ選別的であり、「選別主義的社会保障」である生活保護とは違って、「普遍主義的社会保障」である。貧富の違いを問わず、賃金の有無も問わず、貧困の理由も問わない。選別コストもなく、取りこぼしもなく、誰も屈辱を受けない。
●2.制度の簡素化について。ベーシックインカムを導入し、諸々の社会保障制度を廃止することで、行政制度は極端に簡素化される。ただ、ベーシックインカムはあくまで貧困に対するものであり、障害者支援、あるいは老齢年金などは、また別のものとして考えられるべきだ。
●3.景気の活性化について。≪一般に、貧困層は、富裕層よりも消費性向が高い。つまり所得のうちの消費に回す割合が高い。したがって、ベーシックインカムは、消費需要を増大させ、景気を活性化する効果を持つ。≫
●財源について。例えば給付額が一月五万円とすれば、全国民分で年間七十兆円必要となる。これを税収でまかなうとすると、この時、七十兆円分の増税が必要となる。だが、これがそのまま給付されるのだから、国民全体としては差し引きゼロとなる。払った分が給付されるのだから。ただ、裕福層にとってはマイナスとなり貧困層にとってはプラスとなる。中間層では、払った分だけ後で戻って来る。ベーシックインカムはもっともコストのかからない再分配である。
≪まず、一人あたり5 万円の給付に必要な70 兆円は実質的なコストではない。なぜなら、金は使ってもなくならないからである。私の使った金は、他の誰かの所有物となる。国が使った金も誰かの所有物になる。この世から消えてなくなるわけではない。≫≪全国民の納めた70 兆円が全国民に戻ってくる、というだけのことである。≫
現在でも、福祉と年金を合わせた社会保障給付額は六十兆円ほどになり、七十兆円はそれほど突飛な数値ではない。とはいえ、裕福層の負担増は避けられない。
ベーシックインカムの副作用として、1,労働意欲の低下、2.過剰消費、3.インフレーション、が考えられる。労働意欲の低下は商品やサービスを供給する担い手の不足を招き、供給量の不足をもたらす。需要量に対し供給量が過少であればインフレーションが発生する。過剰消費は景気を活性化するが、それによって供給量が需要量に対して過少となればインフレーションが発生する。つまりベーシックインカムの副作用はインフレーションとしてあらわれる。であればその度合いを物価上昇率で測ることができる。物価上昇率をみることで、給付額をインフレーションを起こさない程度に抑えるよう調整するべきだ。
物価上昇率をみながら給付額を適切に調整可能にするためにも、税収でまかなう基本部分(固定BI)と、貨幣発行益でまかなう積み増し部分(変動BI)の、二階建ての仕組みで考えるのがよい。≪固定BI は富裕層から貧困層への資産移転であり、変動BI は貨幣発行益の全国民への配当という形を取っている。≫
国民本位の貨幣レジーム下では、中央銀行がインフレターゲティングの目標値に適合するように国債の買い入れ額を決定し、政府はその額を国民に給付する。技術進歩率が3%で目標物価上昇率が2%とした場合、毎年5%の率で貨幣量を増やし、その分を国民に給付する。つまり変動BIは、技術的な失業を防ぐための経済政策でもある。現実経済では常に予期せぬ技術ショックが生じ、技術進歩率は変動する。よって、物価上昇率が2%となるように、貨幣成長率=給付額は、経済状況に合わせて、増やしたり減らしたりすることになる。
(ただ、時を経るごとに貨幣量は増大するので、給付額もまた増大する。)
●最低限の生活の保障とマクロ経済の安定とを両立させ、ベーシックインカムを持続可能なものとするために、固定BIと変動BIの二階建てが必要である。
固定BIだけでは、不況が発生して税収が減り、給付額を維持できなくなるかもしれないし、インフレーションが発生し、給付額だけでは生活できなくなるかもしれない。変動BIは、そうならないための経済の安定化政策そのものでもある。ではなぜ変動BIだけではダメなのか。そうなると個人が受け取る給付額が不安定となり、最低限の所得が保障されなくなるかもしれない。
●実現へのプロセス。まず、国債の間接引き受けによるマネーファイナンスで不況を脱すること。その際、国債の増発を「子供手当て」の財源とし、同様にして「大人手当て」を制度化する。両者を統合して変動BIとする。変動BIは増税を必要としないので、実行しやすいと思われる。その後、社会保障の諸々の制度を廃止しつつ、税金を財源とした固定BIを導入する。まず変動BIを増大させてデフレ不況からの脱却を果たし、税収を増やしてから固定BIへと進むのが望ましい。
同時に貨幣レジームの改革も行う。しかしこれはある日突然に完全になるということはない。100%マネー経済への移行は、現行の1%程度から徐々に上げてゆく形をとるしかない。
≪私が望ましく思う変革は、かつてコミュニスト達が起こしたような黙示録的な革命でもなく、現実的な問題に対しその場しのぎのパッチをあてることでもない。理想的なレジームをヴィジョンとして描き、そこへ向かって漸進的に諸制度を変えていくことである。≫