●珍しくテレビをつけっぱなしにして作業していたら、何かの番組で、「アナ雪」の有名な曲「レット・イット・ゴー」が、人気の結婚ソング(結婚式で歌われる歌?)として紹介されているのが聞こえてきて、驚いて画面を振り返った。細かいことは忘れたけど、この曲は、いろいろ絶望したアナのお姉さんが氷の城に一人で閉じこもる場面で歌われる歌で、「一人で閉じこもって自分を愛していればありのままでいられるし、寂しくなんかない」という曲だったはずで、なんでそんな曲を結婚式で歌うのか分からない、むしろ結婚式ではNG曲なのではないかと思ったのだった。
自分の記憶違いなのかと思って、ネットで歌詞を探して読んでみた。確かに、《真っ白な世界にひとりのわたし》という状態に対して《このままじゃダメなんだと》と続き、《誰にも打ち明けずに悩んでいた》状態を《もうやめよう》となって、その後に《ありのままの姿見せるのよ》というサビになるので、前半だけをみるとまるで「誰か(あなた)」に対して「ありのままのわたし」を見せると決めたかのように解釈することができるようになっている。
でも後半になると、《ありのままで空へ風に乗って/ありのままで飛び出してみるの》とあって、不穏な空気がたちはじめる。そして最後には、《これでいいの自分を好きになって/これでいいの自分信じて/光あびながら歩きだそう/少しも寒くないわ》となるので、どうみてもこれは「一人で歩き出す」というニュアンスだろう。さらにその前に、《冷たく大地を包み込み/高く舞い上がる思い描いて/花咲く氷の結晶のように/輝いていたいのもう決めたの》というのもあって、「冷たく大地を包み込み」「氷の結晶のように輝く」という風に冷たさが際立てられているので、「二人で《歩きだ》す」ようには思えない。
なるほど、よくできてるなあと思った。前半だけだとポジティブな詞と解釈することも出来て(というか、解釈するしかなくて)、しかし後半までみるとちゃんと物語の内容と合致していて、しかし、あからさまに「ひとりであること」を強調していないので、そこを気づかずに通り過ぎることもできなくはない。
(まあ、よくできていて面白くない、ということだけど。)
とはいえ、多くの人は「アナ雪」を観ているわけで、映画を観ていれば、この曲が「お姉さんの自閉シーン」で歌われることを知っているはずだ。ならば、結婚式にはふさわしくないのではないかという判断にはならないのだろうか。まあ別に、みんなが知っている、盛り上がる曲だから、細かいことはどうでもいいのかもしれない。歌詞の細かなニュアンスになど、誰もこだわらないのかもしれない。
●noteに、「鼻血を垂らす幽霊・現在と想起の抗争 ポン・ジュノ母なる証明』論(2)」を公開しています。
https://note.mu/furuyatoshihiro