●朝早く出かけて、神奈川県立近代美術館、葉山館(着くまで三時間かかった)でジャコメッティ展、鎌倉館でチリーダ展、そこから渋谷へ出て、ゆーじん画廊で岡崎乾二郎展、を、観た。
●神奈川県立近代美術館のロケーションやその建築とジャコメッティの作品とは徹底的に噛み合ない。というか、こんなに気持ちよく晴れた日に海の近くまで行ってるのに、美術館のなかへ入って美術作品を観るのは、なにか間違っていることであるように思う。部屋を出る時にはまだ薄曇りだったのが、横須賀線に乗り換える頃にはすっかり晴れていて、湿気も少ない気持ちのよい晴れ方で、逗子の駅から、くねくねと蛇行する細い海沿いの道を、建物が途切れたところどころで海が現れてはまた途切れる光が降り注ぐなかをバスが走る。バスは、四つの面のすべてに大きく窓が開かれているので、車内は四方から光が入って交錯する。道には上半身裸の人が歩いているし、時々見える海には光が降り注いでいる。美術館の向かいにはこんもりと盛り上がった小さな山があり、山はちょうど真正面から太陽の光を受けていて、木々の緑が異様なまでにくっきりと浮かび上がっていて、緑の壁が目の前に迫っているような圧迫感さえ感じ、しかしその反対側は海へと開かれる開放的な空間で、なんか美術館のなかに入るのがためらわれ、このまま、ビールでも飲みながら一日海をぼーっと眺めていたいと思うのだけど(というか、それこそが「正しい」やり方だと思うのだけど)、ジャコメッティ展は(チリーダ展も)最終日だということもあり、間違った律儀さから美術館の展示場へと入ってゆくのだった。
●ぼくは普段から荷物が多くて、鞄のなかにはいつも何冊もの本やドローイングの道具が入っていて重たかったりするのだが、今日は遠出だし、散歩というか小旅行のようなものなのでなるべく荷物を軽くしようと思って、鞄のなかは数冊の文庫本とiPodだけにしたのだけど、葉山館ではジャコメッティの『エクリ』を売っていたので、図録と一緒に分厚くて重たい『エクリ』を買ってしまって、肩からかける鞄はにわかに重くなってしまうし、鎌倉では、駅から鎌倉館までの途中にある小町通りにある古本屋で引っかかってしまい、大判の画集を二冊も買ったので、さらに手提げの重たい紙袋まで荷物に加わって、せっかく晴れて気持ちのよい天気のなかを、のんびりとぶらぶら歩けるいい機会なのに、荷物が重くてそうもいかず、こんな日に美術館をまわるということも含めて、二重の間違いを犯してしまっているように思うのだった。
●ゆーじん画廊では、展示してあるちゃんとした「作品」とは別の、岡崎氏が半ば遊びでつくったような、段ボール紙にクレパスでグリグリ描いて形を切り取ったような作品を、画廊の人が箱から出してお客さんに見せているところにちょうど行き当たったので、普段あまり観られないそういう作品を、横目でチラチラ観ることが出来てラッキーだった。