2006-01-01から1年間の記事一覧

●昨日の日記では、サン・ロレンツォ教会の旧聖具室の監視員の話からはじめて、同じくブルネレスキが設計した、サンタ・クローチェ教会にあるパッツィ家礼拝堂のことを書こうと思って書きはじめたのだが、話が全然別の方向へ行ってしまったのだった。しかし改…

●フィレンツェでは、いくつかの美術館でセキュリティチェックが厳しくなっていて、ウッフィツィ美術館とかアカデミア美術館館などの大規模なところでは、空港とまったく同じ手荷物検査と金属探知機でのチェックがあり(ポケットに入れっぱなしになっていた小…

●イタリアにまで行って近代絵画を観ようという気にはならないので、今回の旅行で観たのは、主にルネサンス前後の作品で、美術史的に言えばゴシックからマニエリスム期くらいの時期、1200年代後半から1500年代前半くらいまでの作品で(それ以降のカラヴァジョ…

●フィレンツェなどで、消化不良をおこしてしまう程に様々な多量のルネサンス前後の表象物(絵画や彫刻や建築)に次から次へと触れていると、嫌でも「神」とか「信仰」とかについて考えざるをえなくなる。きわめて狭い地域に、これでもかという程に教会があり、…

●フィレンツェだって、そこに住む人にとってはたんなる即物的な現実に過ぎないのだろうけど、そのような「現実」という文脈をほとんど共有していない無責任な観光客にとっては、非現実的にうつくしく見える。トスカーナの山間の田舎町が、昼の光のクリアーさ…

●イタリアから無事に帰ってくることが出来ました。十二時間も飛行機に乗って行くわけですが、行きの飛行機のなかではベケットの『モロイ』を、帰りの飛行機ではドゥルーズの『シネマ2』を読んでいました。帰りは半分以上寝てましたけど。 ●ごく短い間の滞在…

●明日から、26日まで、旅行のため留守にします。なので、日記の更新はお休みになります。その間、メールなどでご連絡いただいても、お返事は26日以降になってしまします。ご承知下さい。 ●午後九時ころまで喫茶店で粘って、なんとか原稿は書けた。(でも、一…

●慣れない旅行の準備と、旅行に出る前に書いておかなければいけない原稿があるのとで、ここ二、三日何かと忙しい。原稿を書き始めると、入り込んでしまって、時間も飛んでしまうし、旅行に行くことなど忘れてしまう。集中が途切れて、はっと割れに返って、あ…

●ここに載せている写真は、四年くらい前に買った古い京セラのデジカメで撮っていて、長い事ハードに使っているから(最近ではだいたいいつもGパンの尻のポケットに入れて持ち歩いているし)塗装とかも剥げて、外見はかなりボロボロだ。外見だけではなくて、た…

●18日からの旅行のための買い物をする。旅行も買い物も慣れていないのでとても疲れる。(いったい、九日程度の旅行にどんなものがどの程度必要なのか、なかなか想像出来ない。)両手に沢山の荷物を持って靴屋で靴をみていたら、店員から、「今日はお買い物の日…

野上亨介『レッドレッドリバー』

●早稲田大学七号館会議室で、野上亨介『レッドレッドリバー』の上映を観た。(この映画には、ぼくのドローイングが何カットか使われているのだった。)ぼくは野上さんの映画を今まで何本か観ていて、二年くらい前にアテネフランセでやった上映会のパンフレット…

●午後から用事で出かけたのだけど、外は予想していた以上に冷えていた。駅までの道のりを歩きながら、このままずっとこの冷たい風に吹かれつづけたらまた風邪をひいてしまうかもしれないというくらいだ。でも、一度戻ってもっとあたたかい服に着替えている時…

小津安二郎『宗方姉妹』

●ここ最近、夜中の午前一時をまわったくらい、あたりが静かに寝静まった頃から、DVDかビデオで映画を一本観てから寝るのが習慣のようになってしまっている。今日は小津安二郎『宗方姉妹』をDVDで観た。 ●小津は、一時あまりにもハマり過ぎていたため、改めて…

●久しぶりに手書きで手紙を書いた。最近、手で文字を書くのは、自分の名前と住所くらいのものになってしまっていて(妙な自意識かも知れないけど、ぼくは自分の書く字があまり好きではないので)、手紙を書きつつ、自分があまりに漢字を書けなくなっているのを…

●展覧会をいくつか観た。以下、印象に残ったのもについてのメモ。 ●京橋のギャラリー・ユマニテ東京で川島清。川島清の作品は、それ自体で成立していて、外の空間へ向かって関わりを広げてゆくようなものではないと思う。木と鉄や鉛の関係、あるいは木材とそ…

冨永昌敬・執着しないこと

●昨日の晩あたりから、急に冷えてきた。 ●冨永昌敬の面白さが他の誰に似ているかといえばやはり阿部和重で、どちらも「男の子たち」の関係性をとても魅力的に描く。しかし、阿部和重の描く男の子たちと違って、冨永昌敬の描く男の子たちは、ほとんど執着心を…

『シャーリー・テンプル・ジャポン』(冨永昌敬)

●『シャーリー・テンプル・ジャポン』(冨永昌敬)をDVDで観た。すごく面白い。才能があるっていうのは、こういうことなのだなあ、と思った。やっていることと言えば、アイデアとしては面白いものの、ちょっとした思いつきに過ぎないようなことなのだけど、冨…

神話は、現実を事後的に説明するためにつくられるのではない

●神話は、現実(今、こうである状態)を事後的に(権力者にとって都合良く)説明するためにつくられるのではないだろう。そうではなくて、神話によってこそ現実が解釈される。つまり神話があるからこそ、現実が「今、このように」ある。人は、神話によって、たん…

インドのヒンズー教の彫刻(松岡美術館)

●白金台にある松岡美術館に「花鳥画への誘い」という日本の江戸絵画中心の展覧会を観に行った。で、それはあまり大したことはなかったのだけど、常設されているインドのヒンズー教彫刻がとても素晴らしかった。松岡美術館には、古代のガンダーラや中国の仏教…

エリック・ロメール『獅子座』

●エリック・ロメール『獅子座』をビデオで。ぼくがロメールの映画のなかで一番好きな長編第一作。ほぼ全編にわたって、鈍重そうな中年のおっさんが歩き回っているだけの映画。ロメールは1920年生まれで、30年生まれのゴダールやシャブロル、32年生まれのトリ…

●引用、メモ。セザンヌから、息子ポールへの手紙。 ●1906年9月8日 《親愛なるポール、 今日(十一時ごろ)また暑さがかなりぶりかえしている。空気が暖まりすぎ、風が全然ない。この高温はただ金属を膨張させ、飲物の売れ行きを良くし、エクスで相当の地位にの…

●新宿のツタヤにビデオとDVDを返しにゆくついでにジュンク堂に寄って、もしあったらラカンのセミネール七巻『精神分析の倫理』を買おうと決意して部屋を出る。少し前から買おうかどうしようか迷っていたのだけど、上下巻あわせて一万円(税別)という値段は、…

DVDで『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(青山真治)

●DVDで『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(青山真治)。基本的には、映画館で観た時と感想はかわらないのだけど、映画館で観た時は、はじめの方で「おおっ」と思ってのめり込み、途中でスッと冷めてしまったので、否定的な印象の方が強く残ってしまったのだけ…

●ロッセリーニの『ストロンボリ』などをDVDで観ながら、リアリズムと一神教との関係について、とりとめなく思いを巡らせていた。以下の引用は、そのための参考。樫村晴香「Quid?」。 ●《(...)「人間とは何なのか、私はどこからやって来たのか」という問いも…

小島信夫『寓話』

●キャリアも長く多作で、その上作品の多くが入手困難であるため、その全作品のうちのほんの僅かしか読んでいないのだけど、ぼくが読んだ小島信夫のなかで圧倒的に好きなのは『寓話』で、特にそのなかでも茂子さんという女性が書いた手紙の部分がとても好きだ…

小島信夫、ロッセリーニ、ブレッソン

●小島信夫『寓話』の終盤の三分の一くらいを読み返す。DVDで、ロッセリーニ『イタリア旅行』と、ブレッソン『パルタザールどこへ行く』を観る。 ●『寓話』の登場人物たちは、他人のことをいろいろと考える。ほとんど空想すると言ってよいくらい、その考えは…

富樫森の『ごめん』と「日本映画」

●富樫森の『ごめん』をDVDで観ていた。『天使の卵』を富樫森が監督しているらしいと知ったからだ。小説は読んでないけど、あらすじだけをみる限りではぼくには『天使の卵』ような話はただ「きもちわるい」としか思えないのだけど、でも、『鉄人28号』よりは…

●小島信夫の訃報に突き当たったのは、昨日、博物館から返った後、深夜にネットを徘徊している時だった。26日の午前3時58分に亡くなられたそうで、その時間、自分は一体何をしていただろうか、と、まず考えた。(カネフスキーの『動くな、死ね、甦れ』をビデオ…

東京国立博物館で「仏像--一木にこめられた祈り」

●上野の東京国立博物館で「仏像--一木にこめられた祈り」。期待していたほど凄いということはなかったけど、面白かった。それが、千年以上前につくられた、ということと、今、目の前にある、ということ。それを歴史的な資料や文化財としてみるならば、千年以…

●別の目的でヨドバシカメラに行ったついでに覗いたDVDソフト売り場で『ゴダールの探偵』が出ているのを見つけて溜まっていたポイントで購入した。『勝手に逃げろ/人生』あたりからはじまった「八十年代のゴダール」の技術的な集大成みたいな作品で、その画面…