2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

●通りにあるほとんどの店のシャッターはまだ閉まっている。空はどんよりしている。カァカァカァカァ、カーッカーッカーッ、カァーッ・カアーッ、と、異なるリズムで鳴くたくさんのカラスの声が重なる。だが姿は見えない。重なるカラスの声の隙間から、そこだ…

平山瑞穂『野天の人』

●平山瑞穂『野天の人』を読んだ。(「SFマガジン」という雑誌を買ったのは25年振りくらいの気がする。前に買った時には確か山田正紀の『宝石泥棒』とかが連載していた。)『ラス・マンチャス通信』は買ってあるのだが、今ちょっと、読んでいる余裕がないので、…

『犬猫』(井口奈己)

●『犬猫』(井口奈己)をDVDで観た。評判通り素晴らしい映画だった。この映画は当然、チョン・ジェウンの『子猫をお願い』(http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/yo.39.html#Anchor1240802)と比べられるような作品(主演の女の子の年齢が同じだし、監督も同…

●レンタルビデオ屋に入ったら、おそらく五十年代の、耳に荒々しくささくれ立つような、バリバリのハード・バップが流れていて(それが誰の演奏なのかということまで聞き分ける耳はぼくにはないけど)、カウンターには若い、二十歳そこそこくらいの男の子が二人…

●出かける用事があり、電車の時間も迫っていて、あたふたと準備していたら、コーヒーを電話機の上にこぼしてしまった。あちゃーっ、これは壊れてしまうかなあ、と思いつつ、あわてて、とりあえずタオルでコーヒーを拭き取ったのだが、そんなこんなしているう…

『バルカン動物園』(作・演出、平田オリザ)

●青年団が97年に公演した『バルカン動物園』(作・演出、平田オリザ)をビデオで観る機会があった。猿を人工的に人間に近いところまで進化させようというプロジェクトのもとに、生物学だけでなく、物理学、医学、心理学などの多様な研究者が出入りする研究室で…

●自転車で隣の駅まで行くと、行きはゆるやかな下り坂がつづき、帰りは軽い上り坂が続く。これは自転車を漕ぐペダルの重さによってはじめて意識されるもので、歩いているだけでは気づかないくらいの微かなものなのだが。さらに、最寄りの駅からぼくの住んでい…

言水制作室で、加藤陽子・展

●神保町の言水制作室(TEL03-3292-9229)http://www.kotomizpress.jp/exhibitionatkotomizpress.htmlで、加藤陽子・展を観る。 ●加藤陽子の作品について書くのはとても難しい。それはぼくが、加藤氏を個人的に十代の頃(高校生の頃)からよく知っているというこ…

『「雨の木」を聴く女たち』(大江健三郎)

●久しぶりに『「雨の木」を聴く女たち』(大江健三郎)を読み返してみたのは、ジョン・ヒューストンの『火山のもとで』をビデオで観たからなのだった。『「雨の木」...』を構成する連作の短編にはどれも、マルカム・ラウリーの『活火山の下で』の「こだま」が…

●家にいて、いろいろと用事をしている時に、竹橋のゴッホ展が最終日であることに気づいた。でも、今から行ったのでは間に合わないし、だいたい、最終日で日曜日だから凄いことになっているだろうと思い、その場ですぐ諦めた。と言うか、諦めるしかなかった。…

●昨日の夜、『タイガー&ドラゴン』をはじめて観たけど、あまり面白いとは思えなかった。大して面白くない話でも、話法を複雑にすればそれなりに「観られる」ものになるし、一つ一つのシーン(あるいはネタ)そのものが面白くなくても、テンポよく次々に繰り出…

●すいた時間の先頭車両に乗ると、電車が風を切って走っているのだということを実感する。ドアの隙間から風が吹き込み、ヒューッ、ヒューッ、と風を切る音がして、その吹き込みでドアがカタカタと振動する。対向車両とすれ違うと、その風圧で、ゴオーッという…

●昼間、部屋で、うつらうつら眠っていたぼくの頭のなかに、アパートの前に敷かれた砂利に車のタイアが乗り上げる音がすうっとかき分けるように侵入してくる。それで目が覚めるわけではない。半ば眠ったままの状態で、自分の部屋の前あたりに車が停まり、ドア…

●展覧会の後片付け、およびギャラリーからの搬出。それが午後2時からだったので、その前に目黒まで行って、庭園美術館でアンソール展を観た。 ●1880年代前半の、初期の写実主義的なアンソールを何点かまとめて観られたのはとても良かった。特に、圧倒的に素…

●展覧会、終了しました。わざわざ会場まで足を運んで観て下さった方々に感謝します。ありがとうございました。最終日なので割と長い時間会場にいたのだけど、ちょっと風邪ぎみで薬を飲んでいたせいかやけに眠くて、会場のイスに座りながら、ずっとうつらうつ…

●今ちょっと、面白いといえばとても面白いのだが、かなりハードでプレッシャーのかかることをやっていて、それが今日、ちょうど半分ほど終わったのだった。今までは、先のことなど考えずに淡々とやっていた(こなしてていた)のだが、「半分」という地点に来た…

●ぼくの展覧会で受付をやってくれている女性(このギャラリーは基本的に川崎市の文化財団がやっているので、この女性は美術の専門家としてのギャラリストではなくて、文化財団にパートで雇われているフツーの人だと思われる)が、小さい頃から絵が好きだったん…

●何かの機械が作動しているゴォーッという音が、どこからともなくずっと聞こえつづけている。シュルシュルシュルッとか、ゴホゴホッとかいう、水の流れる音も、天井にびっしりと張り巡らされている管のあちこちから聞こえてくる。上から覆いかぶさるように圧…

●そこから光がやってくる場所としての空があり、その光が降り注ぎ、それを反射する場所としての地面があり、そして、我々が存在するその場所には重力が作用している。空と地面と重力。おそらくぼくの絵は、この3つの要素によってフレームの外との繋がりが確…

趣味」とか、その「偏り」とか

●「趣味」とか、その「偏り」とかいうものは、決して恣意的なものではなく、まるで「私の身体」のように、気づいた時には既にそれと共にある、と言うか、それと共にあることによってしか「私」が存在出来ないようななにものかのことだ。別にぼくは、自分の趣…

●歩行者用の信号機の上にとまったカラスが、黒くて艶のある羽根を反らし、全身を使って鳴き声をあげる。空は雲で覆われ、光は彩りを欠き、歩いている人々の表情を単調にみせる。風が強く吹き込み、しばらく立ち止まっていると寒いくらいだ。細い裏道なのだが…

ぼくの作品は色彩の使用が...

●最近のぼくの作品は色彩の使用がきわめて限定的なものに留まっていて、その理由についてよく聞かれる。その理由のうちの大きなものの一つは、現在ぼくが主に使っている絵の具がカラージェッソという、本来絵を描くというよりも、下地に使う色材を使用して描…

●陽の当たるホームで、電車が来るまでの時間、白い紙に印字された文字を追っていた。アナウンスがあり、電車がホームに滑り込んで、ドアが開く。そこまでを、気配と音で感じてから、白い紙から目を上げる。開いたドアは、直射日光の当たる紙の白に慣れた目で…

●今日じゅうに済ましてしまおうと思っていた事に、結局、全く手をつけることなく、一日ただだらだら過ごしてしまった。昼間、つけっぱなしのテレビで保坂尚輝がつくっていたピーナッツご飯(米と一緒にピーナッツ入れてを炊き込む、というだけ)を夕食のときに…

●「paint/note(http://d.hatena.ne.jp/eyck/)」のeyck氏が、ぼくの展覧会についての詳細なレビュー(http://d.hatena.ne.jp/eyck/20050506)を書いて下さっていて、とてもありがたいです。多くの美術家は、「批評」以前の、単純な「感想」や「反応」というレベ…

清水崇『稀人』

●清水崇『稀人』をDVDで。作品として上手くいっているとは到底思えないけど、清水監督の(とにかく小ネタを連発して繋いでゆく)『呪怨』とは全く異なる(意外な)別の才能がかいま見られるという意味で、とても面白かった。この映画はホラーであるというよりエ…

ゆっくりと時間をかけて散歩した

●ずいぶんと久しぶりに、ゆっくりと時間をかけて散歩した。最初はそんなに歩くつもりはなかったのだけど、いつも曲がる道を一本スルーしてみたら、今まであまり見覚えのない地域に入って行ったので、そのままずっと歩いてみた。住んでいるところに案外近い場…

●「新潮」6月号の保坂和志の連載の最初の方を読んでいて、保坂氏の小説をはじめて読んだ頃のことを思い出した。 保坂氏は、今では文壇(という言い方でよいのかはわからないが)での評価や地位と、ある程度以上の固定的な読者(ファン)とのどちらも獲得した、ほ…

●ピークほどではないにしても、まだ花粉症の症状はつづいていて、一年のなかで最も陽気だと思われる今の時期に、寒くもなく暑くもなく、湿ってもいなければ乾燥しているわけでもないさらさらした風に吹かれていても、鼻がつまるとかグズグズするとかくしゃみ…

昨日のつづき、柴崎友香『フルタイムライフ』について

●『フルタイムライフ』が、いままでの柴崎氏の作品よりも幅が広がったとすれば、それは次の二つの理由によると思われる。 いままでの柴崎氏の作品に登場する人物の変化は、基本的に天気の変化、場所の変化、会う人の変化によってもたらされるものであった。…