2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

●画家の小林正人は、どんな作家、どんな作品に影響を受けているのかと質問された時、目に見えるものの全てに影響を受けている、と答えていた。これは一見、なるほどと思え、とても格好良い答えではあるが、ちょっと格好良過ぎるとも言える。 ある作家、ある…

ゴダール『アワーミュージック』と、米澤穂信

●ゴダールの『アワーミュージック』を観ると、米澤穂信の『さよなら妖精』でマーヤが話していたMostar(モスタル)にある石の橋が、破壊されてしまったことを知ることが出来、そしてその橋の再建中の姿を見ることが出来る。さらに、この石の橋の残骸を川から引…

●お知らせ。「ユリイカ」3月号(特集レオナルド・ダ・ヴィンチ)http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%EC%A5%AA%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%C0%A1%A6%A5%F4%A5%A3%A5%F3%A5%C1に、「レオナルド/空気を抱え込む人体」という文章を書いています。 ●黒沢清の…

吉田喜重『鏡の女たち』と『さよなら妖精』(米澤穂信)

●吉田喜重『鏡の女たち』をDVDで。とにかく、半端ではなく気合いが入っているのがビンビンに伝わってくる。それは凄いと素直に思う。あらゆるカットの、構図、照明、繋がり等々がいちいち、やたらと凝っている上に練り込まれている。しかしそれが、ちょっと…

ほうほう堂×チェルフィッチュ「耳かき」

●横浜のSTスポットに、ほうほう堂×チェルフィッチュの「耳かき」を観に行った。行ってみて驚いたのだけど、STスポットのあるSTビルは、(長い)浪人時代にぼくが通っていた予備校のすぐ近くのビルで、毎日このビルの敷地を横切って予備校に通っていた、そのビ…

『犬はどこだ』(米澤穂信)

●『犬はどこだ』(米澤穂信)。おそらくこれは、この作家の唯一の、ライトノベル系の読者を想定しないで書かれた(そのような「縛り」なしに普通のエンターテイメント小説として書かれた)作品なのではないか。だから、本も厚目だし、字も小さめで、描写もゆった…

『ボトルネック』(米澤穂信)

●『ボトルネック』(米澤穂信)。米澤穂信の小説の細部はいつも貧しい。だから、読んでいて常にどこか物足りない感じを覚える。しかし、にも関わらず、最後まで読むと、必ずその不満足を補うほどの、突き抜けた何かが示される。おそらく、自分の持っている技術…

オルセー美術館展、中村宏・図画事件、MOTアニュアル「等身大の約束

●東京都美術館でオルセー美術館展、東京都現代美術館で、中村宏・図画事件、MOTアニュアル「等身大の約束」、MOTコレクション・1940-80年代の美術、を観た。 ●「オルセー美術館展」。早起きして、ラッシュの電車に乗って、開館と同時に東京都美術館に着いた…

●昨日、一昨日は、親戚一同で、今年93歳になった祖母を熱海の温泉に連れて行くというイヴェントに参加しいてた。祖母と、父、母、伯母と、その子供達という編成で、車二台に分乗して行った。ぼくとしては、温泉に行くのは十五年ぶりくらいだし、こういう「家…

マルコ・ベロッキオ『新肉体の悪魔(蝶の夢)』をビデオで

●マルコ・ベロッキオ『新肉体の悪魔(蝶の夢)』をビデオで。(『蝶の夢』を『新肉体の悪魔』というタイトルでビデオにするのは、どうかと思う。)『夜よ、こんにちは』がとても素晴らしかったので観てみたのだが、これはとことんかったるい映画でしかなかった。…

『渚にて』(ネビル・シュート)つづき

●ゆっくり、ゆっくりと読んでいた『渚にて』(ネビル・シュート)を読み終わってしまう。読んでいたここ三日くらい、すっかりこの小説の世界にハマッていて、昨日の日記など、いかにも「染まって」いて、我ながらちょっと笑ってしまう。 この小説の淡々とした…

●部屋に戻ってテレビを点けたら、ニュース番組の天気予報で「今日は四月並みの陽気でした」と言っていた。でも、夕方吹き荒れていたピューピューと強い風はかなり冷たく、久しぶりに「冬」を感じた。それにしても、今年の冬はシビアに「冬」を実感することが…

『渚にて』(ネビル・シュート)

●午後に原稿のゲラを戻した後、『渚にて』(ネビル・シュート)を読み始め、半分ほど(4章まで)読み進んで、はやく読んでしまうのはもったいないので、中断してこの日記を書き始めた。この小説は五十年代の古いSFなのだけど、興味をもったのは「ユリイカ」の吉…

マルコ・ベロッキオ『夜よ、こんにちは』

●マルコ・ベロッキオ『夜よ、こんにちは』をDVDで観た。去年、ベロッキオの新作が公開されたのは知っていたけど、前に観たベロッキオが『肉体の悪魔』(って、もう二十年前の映画なのか!)で、特にすごく面白かったという印象もなかったので、スルーしてしまっ…

ジャック・ドワイヨン『イザベルの誘惑』

●ジャック・ドワイヨン『イザベルの誘惑』をビデオで。ドワイヨンの映画はだいたい九十分前後で、決して長いものではないが、観客に「一息」で観ることを強要する。もっと長い映画であっても、流れがかわったり、緩んだりする、息継ぎのような場所が何度かあ…

●世田谷美術館「田園交響楽」

●随分と久しぶりに世田谷美術館へ行ったのだが、用賀の駅前の様子がすっかり変わっていて驚いた。本当に、駅前を再開発すると、どこも同じ風景になるのだなあと思って歩き出す。美術館まで十五分くらい歩くのだが、その道のりも「散歩道」風に整備されていて…

同じ間違いを何度も繰り返す

●同じ間違いを何度も繰り返す、絲山秋子と言おうとすると、二回に一回は「あきやまいとこ」と言ってしまう。宮崎あおいと言おうとすると、十回に八回は「宮崎ますみ」と言ってしまう。 ●分析。上の文章の発言主が主に言いたいのは、二番目の、宮崎あおいを宮…

『東京から考える』(東浩紀・北田暁大)2

●『東京から考える』(東浩紀・北田暁大)を、とりあえず最後まで読んだ。読んでいてずっと、東浩紀の発言は多分に偽悪的なもの、割合良識的でバランスのとれた発言をする北田暁大との対比で、その方が面白くなるだろうという役割的な判断によるものなんじゃな…

『東京から考える』(東浩紀・北田暁大)1

●電車のなかで『東京から考える』(東浩紀・北田暁大)をパラパラみていた。まだ半分くらい、サラッと読んだだけの時点で頭に浮かんだ、無責任な印象に過ぎないことをことわりつつ、思ったことを書く。 ●この本はつまり、もはや「おたく」は「動物化」の最前線…

『馬』(小島信夫)と「風景」

●確かに、「風景」は内面的な人間によってのみ見出されるのかもしれない。しかしそれはあくまで「意識」されるということで、それを意識しない人にも「風景」は作用するのではないだろうか。 ●昨日読んだ小島信夫の『馬』には、風景がまったく出てこない。と…

小島信夫『馬』

●ずっと書いていた原稿をなんとか書き終えることが出来たので、ちょっとホッとして、小島信夫『馬』を読み始めた。『馬』は『抱擁家族』の原型とも言える小説らしいと知っていて、ぼくにとって『抱擁家族』はあまりに強烈過ぎて、読むのがとても辛くて、読み…

ヘレン・フランケンサーラー

●最近、ヘレン・フランケンサーラーという画家にとても興味がある。最近と言っても、そのきっかけは一昨年の8月に府中美術館でやったホイットニー美術館の展覧会で観たことだから、もう一年半くらいになる。抽象表現主義の女性画家では最も有名な人で、加工…

八王子市夢美術館で鈴木信太郎展

●八王子市夢美術館で鈴木信太郎展。近くにあるのに初めて行った。(「夢美術館」なんて名前のところにはなかなか足が向かない。)鈴木信太郎という画家については何も知らなくて、チラシの絵がなんとなく引っかかっていたのと、「夢美術館」にも一度も行ったこ…

●昨日読んだ『not simple』(オノナツメ)からは、面白いとかつまらないとか言う前に、どのようなひっかかりも得られなかったのだけど、読んでいる時に『ビフォア・サンセット』(リチャード・リンクレイター)という映画のことをちょっと思い出していた。たんに…

●オノ・ナツメ『not simple』。ぼくにはこのマンガの面白さが分らなかった。お昼にやってるテレビドラマみたいなベタな話をオシャレな絵で描いた。構成が凝っていて上手い。ブック・デザインがかっこいい。するする読めて何も残らない。 ●今日の散歩(http://…

●お知らせ。今日発売の「風の旅人」24号(http://www.eurasia.co.jp/syuppan/wind/index.html)に、「虚構の人物と共に長い時間を過ごすこと」という文章を書いています。 ●ドワイヨン『家族生活』をビデオで。これは初めて観た。ドワイヨンは、狭くてキツいと…