2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

●友人から電話があり、作品を批判されたという愚痴を聞かされた。どういう風にけなされたのかと聞いてみると、それはいかにも現代アート系(?)の人が「絵画」に対して口にしそうな批判だったので、そんな「批判」自体が紋切り型なのだから、そんな事を気にす…

●季節の変化は、あたたかくなってきたとか、梅が咲いたとか、桜のつぼみが膨らんでいるとか、そういう意識的に捉えられることでだけ感じているわけではない。花粉症なんていうのもそうだけど、身体は勝手に何かをキャッチして、それに対する反応を勝手にする…

●あり得る誤解を避けるために書くが、ぼくが26日の日記に書いた「親しげであるはずのものから浮かび上がる細かな齟齬」というのは、知覚の過剰な(あるいは麻痺した)作用によるもの、または過剰な読み込みなどによる世界像の「ゆがみ(揺らぎ)」、つまり幻覚の…

05/03/28(月) ●書評の原稿はゲラの戻しも無事に終わり、次に出る「新潮」にはぼくの書いた『傷口にはウオッカ』(大道珠貴)の書評が載るはずです。ところで、いままでこの日記で何度も『傷口にはウォッカ』と表記していた小説のタイトルは、正しくは『傷口に…

●現在は、超越的な次元(第三者の審級でもメタレベルでもよいのだが)の消失した時代であり、それが問題なのだという言説があり、例えば北田暁大の『嗤う日本のナショナリズム』などはそのような問題を取り扱ったそれなりに立派な本ではあるとは思う。 アイロ…

●「発見」はあらかじめプログラム組み込むことが出来ない。だからこそ発見と呼ばれる。未知なものを求めて前人未到の海原に船を出しても、その先で発見されるのは出来合いのオリエンタリズムだったりすることもしばしばだ。むしろ、発見という言葉に含まれる…

有明のZa Gallery有明で今澤正・展

●有明のZa Gallery有明(「ゆりかもめ」国際展示場正門駅「りんかい線」国際展示場駅ちかくのWANZA ARIAKE BAY MALLの2F。TEL03-5530-5711)で今澤正・展。基本的に今までの今澤氏の作品とかわりはないが、おそらく展示される空間との関係で選択されたのだろう…

目黒区美術館区民ギャラリーで浅見貴子・展

05/03/24(木) ●目黒区美術館区民ギャラリーで浅見貴子(http://www.gaden.jp/arts/azami.html)・展。浅見氏の絵画作品は基本的に黒と白とで出来ていて、それを媒介する中間的なトーンとしてのグレーがない。このことが、浅見氏が穿つ点に保留や逡巡のないきっ…

『童年往時』

●『童年往時』は、はじめて観たホウ・シャオシェンであり、最も好きなホウ・シェオシェンなのだが(この映画が日本で公開されたのは確か88〜89年のことで、その頃、昭和が平成にかわり、映画作家として北野武と阪本順治がデビューし、そしてぼくが三浪の末大…

●電車でうとうとと眠った。うどんを食べる夢を見ていた。目が覚めた時、口が「うどんを啜る」かたちになっていた(軽く啜ってもいた)。隣に座っていたカップルがうどんの話をしているのが、寝覚めの耳に聞こえた。腹が減っていたのだった。夢なんてこんなもの…

オリヴェイラ『メフィストの誘い』

●オリヴェイラの映画のテキストと映像(音声)との乖離についてはこの日記で何度も書いていてそのくり返しになるけど(例えば「http://www008.upp.so-net.ne.jp/wildlife/yo.29.html#Anchor4528313」)、『メフィストの誘い』をDVDで観ていて、その不思議さを改…

●朝方、荒れた感じの冷たく強い風が吹いて埃を巻き上げ、花粉をまき散らす。自動車のタイアに踏みつけられてペシャンコになったアルミ缶が、ガラガラガラと音を立てて風に転がされて行き、再び別の車に轢かれて転がり、さらにまた轢かれる。信号待ちでふと見…

●ほぼ一日かけて、『傷口にはウォッカ』(大道珠貴)の書評原稿と格闘していた。ああでもないこうでもないとこねくり回したあげく、結局、今までこの日記で大道氏の作品についていろいろ書いたことの総集編のような内容になってしまったかも知れない。そんなの…

●今度の展覧会の図録のための打ち合わせで、川崎まで行く。ギャラリーの北村さんと、印刷会社の方と3人で、掲載する図版写真を決める。打ち合わせが15時からなのだが、12日に撮影したフィルムが家に届いたのが13時頃で、それを受け取ってそのまま中身をよく…

●書評の原稿がはやめに仕上がりそうなら、土曜日あたりに横浜美術館のデャシャンと平塚市美術館の鳥海青児を観に行けるかもと思っていたのだが、どうも無理っぽい。良い作品というのは、読めば読むほど尻尾が掴めないと言うか、するすると掌から溢れてまう感…

作品と印象について

●作品というものを理解しようとする時、あるいはそれを分析しようとする時でも、結局それは「印象」に基づくしかないのではないだろうか。ここで印象というのは、作品によって与えられた「感覚的なもの」というような意味だ。つまり、作品によって触発された…

アパートの上の階の家族が引っ越して行った

●アパートの上の階の家族が引っ越して行った。ぼくの住んでいるアパートは(アトリエとして使うため)単身者向けのものよりやや広く、しかし家族向けとしては狭く(しかも古く)、だから、若くてまだ子供が小さい(そしてあまりお金のなさそうな)家族が何世帯か住…

●天気予報が真冬並みの寒さだと報じ、実際とても寒いのだけど、それでも、いつの間にかもう、冬という気分ではなくなっているのに気づいた。それは、花粉が飛んでいるからというのもあるのだろうが、おそらく光の感じが随分と変化していることが大きいのだと…

ギャラリー覚の金田実生・展

05/03/13(日) ●昨日観た、ギャラリー覚の金田実生・展(http://www6.ocn.ne.jp/~g.kaku/kanedamio.html)について少し。 ●金田氏のタブロー(ドローイングは、またちょっと感触が異なるのだが)は、「目ではないものによって見られた」視覚像とでも言えるような…

●カメラマンの末正さんに来てもらって、アトリエで新作8点を撮影。展覧会まであと一ヶ月とちょっとというこの時期に新作の写真が必要なのは、図録で使うため。(この図録は、展覧会の会場に来て下さった方に無料で差し上げることになります。お金は川崎市の文…

●今度の展覧会の図録にテキストを書いて下さる批評家の早見尭さんが、ギャラリーの北村さんと二人でアトリエに新作を観に来た。ただでさえ、まだ誰にも観せたことのない(自分しか観ていない)作品を最初に人に観てもらう時は緊張するのだが、それが、半ば自分…

こうの史代『夕凪の街桜の国』

●こうの史代『夕凪の街桜の国』。この作品は「ヒロシマ」という圧倒的に大きくて強い現実を題材としている。そして、この作品の強さは、そのような大きな現実に依存していない。この作品を支えているのはあくまで表現として組み立てられたものの内部の強さで…

●ひしめく看板や電飾。パチンコ、テレクラ、カラオケ、キャッシング、回転寿司、量販店、コンビニ、居酒屋、カプセルホテル、風俗店、マンガ喫茶。それらの店名が書かれた文字が、輝き、点滅し、色を変え、右から左へ、左から右へと流れ、くるくると回転する…

吾妻ひでお『失踪日記』

●吾妻ひでお『失踪日記』。この作品に対する感想はとても複雑なものがある。確かにこの作品は凄い。この「凄い」というのが、決して《全部実話です(笑)》という表紙に印刷された吾妻氏の言葉の、「実話」という部分に寄りかかるものではなく、「(笑)」までを…

ホックニーのジョイナー写真のつづき

●一昨日、ホックニーのジョイナー写真(とぼくの作品との関連)について書いた時、ウェブ上で画像が見つけられなかったのだけど、メールでその在処を教えて下さった方がいたので、リンクしておく。(http://www.joshibi.ac.jp/nf/artsactivities/jam/collection…

●建物の一階のエントランスで立って人を待っている。暖房が効き過ぎていて頭がボーッとする。大理石風の床を、従業員がモップで磨いている。ワックスがしみ込んだものなのか、モップがかけられたところは光沢が違っている気がする。床には天井の蛍光灯が反射…

デビッド・ホックニーの「ジョイナー写真」と私

●作品を制作していてふと思ったのだが、ほくの今つくっている作品は、案外、80年代初め頃にデビッド・ホックニーがつくっていた「ジョイナー写真」を観た記憶に、大きく影響を受けているのではないだろうか。 ●人間の視界は左右では約180度ちかくひろがって…

●暖冬で雪の少ない年は、3月にはいってからどかっと大雪が降ることが多い(関東地方)、というのは、気象に関する知識に裏打ちされているわけではない、ぼくの経験からの思い込みなのだけど、しかし今年は果たして、暖冬だと言えるのだろうか。確かに、はじめ…

青木淳悟『四十日と四十夜のメルヘン』

05/03/03(木) ●『傷口にはウォッカ』の書評のために、それ以外の大道珠貴の小説をいくつか読み返しながらも、それと平行して、青木淳悟『四十日と四十夜のメルヘン』を読む。 ●『四十日と四十夜のメルヘン』は、日本文学の系譜としては後藤明生から阿部和重…

●3月に入り、日も長くなったというのに、朝晩の冷え込みは依然として厳しく、なかなか緩んでくれない。しかし、昼間は随分と寒さが緩んだ。恐らく、近くでしている道路工事の交通誘導をしている人だと思うのだが、おっさんが一人、日当たりの良い、畑の隅っ…