2005-08-01から1ヶ月間の記事一覧

フロイト/ウィニコット

●フロイトだけを読むと、快感原則が支配する原初的な「エデンの園(母子未分化の状態)」を破壊するのは、外からの(現実原則の)暴力的な力、例えば「父」による強い「禁止」(抑圧)のようなものだという風に読めて、つまり父による「禁止」の声によって子供に超…

●雨で湿って黒々としたアスファルトに、真っ赤なネオンの光が反射して、その赤い反射光が点滅し、それを自動車のタイアが踏みつけて、湿った道路とタイアが触れ合うチリチリという音をたてて通り過ぎてゆく。雑踏のなかで、建物の軒下で雨をよけて立ちながら…

『サマー/タイム/トラベラー(2)』(新城カズマ)

●『サマー/タイム/トラベラー(2)』(新城カズマ)は、予想していたよりは面白かった。この小説は、特別な人物(自分は特別でありたいという肥大した自意識を持った人物)が、普通の人(世の中に存在する無数の人々の内の一人)になってゆくという過程の話で、つま…

A-things 井上実・展

●吉祥寺のA-things(http://athings.exblog.jp/)へ、井上実・展を観に行った。(地図は、ここhttp://map.yahoo.co.jp/pl?nl=35.42.11.196&el=139.34.44.965&la=1&fi=1&skey=%c9%f0%c2%a2%cc%ee%bb%d4%b5%c8%be%cd%bb%fb%cb%dc%c4%ae%a3%b2-%a3%b2%a3%b8-%a3%b3…

『サマー/タイム/トラベラー(1)』(新城カズマ)

●『細雪』を読んで、『サマー/タイム/トラベラー(1)』(新城カズマ)を読むと、(小説としての豊かさは勿論別にして)「萌えキャラ」(雪子、悠有)のつくり方というのは、時代を超えて案外変わらないものなのだなあ、と気付く。 ●『サマー/タイム/トラベラー(1)』…

『阿部和重対談集』(3)

●今月の15日の日記に、『阿部和重対談集』で阿部氏が、女性の登場人物を描くために《例えば、女物の服とか着るわけですよ》と発言していることに対して、まるで「阿部和重の小説」みたいな滑稽な論理の飛躍があって面白い、ということを書いたのだけど、それ…

●午後から台風だというので、午前中のうちに用事を済ませてしまおうと思って出かけた。もう既に雨は降っていて、強く降ったり弱くなったりをくり返しているので、弱くなった頃合いをみて出かけ、出先でも、建物から建物の間を移動する時には、雨が弱まるのを…

石川忠司『現代小説のレッスン』(2)

●『現代小説のレッスン』(石川忠司)の村上龍についてのところで、村上氏の小説で、「眼」の欲望が歪んだものにならず、「健康」であることが出来ているのは、もともとそこに「内面」や実質のある「情念」が存在しないからではないか、ということが書かれてい…

石川忠司『現代小説のレッスン』(1)

●石川忠司『現代小説のレッスン』はとても面白かった。この本は中身がぎっしり詰まった本で、もし「文芸批評」みたいな(作法をふまえた)書き方で個々の「作家論」として書かれたとしたら、相当に分厚く立派な現代小説論集になっていたと思われるが、そういう…

●ゴッホが描く木みたいに緑が濃く旺盛に葉を繁らせている近所の栗の木に、もう既にたくさんのイガグリが実をつけていることに、道路脇に一個だけイガグリが転がっているのが目に入り、えっ、と思って改めて木を見上げたことによって気が付いた。

『細雪』

●『細雪』は、文庫や全集などで既に何種類か持っているのだが、改めて筑摩書房の日本文学全集の谷崎潤一郎(二)を古本屋から買ったのは、巻末の吉田健一の文章が面白そうだったからだ。吉田氏はこの文章で、小説では、それがどんなに奇抜な話であろうと、それ…

「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」(林道郎)アンディ・ウォーホル

●ART TRACEが出している「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」(林道郎)のアンディ・ウォーホルの巻を読んだ。ウォーホルという名前は超有名なのにも関わらず、その活動や作品の詳細は以外と知られていなくて(ぼくもそれほどは知らなくて)、例えばウォーホル…

●ここ何日かどんよりした天気だったのだが、今日はからっと晴れた。しかし、まだまだ暑いとはいえ、光はもう夏の盛りのものではなくなっている。日も随分と短くなっている。これからの暑さは過剰な光によってもたらされるのではなく、その過剰さの名残のよう…

『もののけ姫』(宮崎駿)

●『もののけ姫』(宮崎駿)はいままで観ていなかったのだが、DVDで観て驚いた。なにしろこの作品は、宮崎駿作品なのに人が空を飛ばないのだ。軽々と天空へと飛翔する人物の代わりに、この映画では、徹底して地を這い回る獣たちがいる。さらに、天空へと飛翔し…

坂本龍一「きみについて」

●坂本龍一のCMやTVの仕事を集めたベストアルバム(『CM/TV』)をなんとなく聴いていて、「きみについて」という糸井重里の詞がついている曲(ぼくにとってこの曲は坂本龍一という人のファーストインプレッションとなったような曲なのだが)の、詞の解釈をぼくは…

『阿部和重対談集』(2)

(もうちょっと『阿部和重対談集』について) ●『グランドフィナーレ』には阿部和重の小説としては画期的だと思われる沢見とIとがホテルの一室で対話するとても美しいシーンがある。しかし、今までの阿部氏の小説にはあまりこのような「それ自体として美しいシ…

『阿部和重対談集』(1)

●『阿部和重対談集』を読んでいて圧倒的に面白かったのは(短いけど)角田光代との対談で、それはまるで阿部氏の小説を読んでいるような面白さがあり、阿部氏自身の発言も、阿部氏の小説の登場人物みたいになっていた。 阿部氏はおそらく凄く真面目な人なのだ…

●夕方からは雨みたいだよ、という発話された文は、実際に雨が降るのか降らないのかという事実との関係によってのみ意味を持つのではなくて、例えば、出かけるのなら傘を持っていった方がいいよ、という意味であるかもしれないし、あなたには出かけて欲しくな…

●電車を降りて地下にある改札を抜けると、改札前のスペースに、まるで配水管が詰まって水が逆流したみたいな流れ方で人がごった返していた。その乱れた流れをかいくぐるように抜け、地上への階段のところまでゆくと、出口から見える四角く切り取られた空から…

松浦寿輝『半島』

●松浦寿輝『半島』。この小説は、「文學界」に連作としてぽつぽつ発表されている時に途中まで追っかけて読んでいたのだが、何だがすごく退屈な話に思えて途中で追いかけるのをやめてしまって、本になった時もすぐに買ってはいたのだがそのまま読む気なならず…

高橋洋『ソドムの市』

●高橋洋『ソドムの市』をDVDで。『血を吸う宇宙』(07/26の日記参照)が意外にも面白かったので観てみた。好きか嫌いかは別として、この映画にははっきりとある実質を感じさせる密度があり、惹き込まれてしまった。この映画の密度は、作家である高橋洋が、徹底…

目が、今、現に見てしまっている風景の強さ

●目が、今、現に見てしまっている風景の強さ。確かに、人は目の前にあるものから、巧妙に自分が見たいものだけを選別して見てしまうという傾向があるし、見ていたつもりが実はまったく見えていなかったと分かることもしばしばあるが、それにしたって、「見え…

エアコンの室外機を巨大にしたような...

●エアコンの室外機を巨大にしたような機械がうなりながら駆動している。他にも、太いのやら細いのやら、様々な管が縦横にはしり、所々にバルブやらメーターやらがついていて、それらがいくつかの箱状の機械に接続されていて、ゴーゴーと音をたてている。狭い…

京橋プンクトゥム・フォトグラフィックス・トウキョウの上田和彦・展

●昨日、京橋のプンクトゥム・フォトグラフィックス・トウキョウ(http://www.punctum.jp/index.html)で観た上田和彦(http://d.hatena.ne.jp/uedakazuhiko/)のペインティングは面白かった。(ぼくはこの人のことを全く知らなかったのだが、メールを頂いて面白そ…

府中市美術館で、山田正亮の絵画・展

●府中市美術館(http://www.art.city.fuchu.tokyo.jp/)で、山田正亮の絵画・展、京橋のプンクトゥム・フォトグラフィックス・トウキョウで、上田和彦・展。 ●山田正亮は、その徹底した一貫性によって「日本の美術」のなかでは孤高の存在であり、(日本という、…

ついつい、凝視してしまう

●ついつい、凝視してしまう。ぼくは、視覚的に面白いものや興味深いものに、気が付くと、つい目が釘付けにされ、凝視してしまっているという悪い癖がある。勿論ぼくにも、行きずりの見ず知らずの他人や、その持ち物などを、じっと見つめてしまうことが失礼な…

神代辰巳『噛む女』

●神代辰巳『噛む女』をビデオで。この映画には不思議な魅力がある。 ドラマとか脚本とかの次元では、ぼくにはこの作品はちょっと受け入れがたいところがある。これはバブル時代につくられた全共闘勝ち組の男たちの話で、主人公は、昔は映画青年で、今はアダ…

●ぼくは普段、旅行へ行きたいとか、海や山へ出かけたいとかいう欲望はほとんどなくて、部屋に籠っていることが全く苦にならないのだけど、夏の間は時間が許す限りできるだけ「外」にいたいという気持ちが強い。外といっても、近所を散歩したり、目的もなく電…

●ビデオを返すために部屋を出る。自転車はパンクしたままなので、ビデオ屋まで片道15分くらい歩くことになる。夏の夜のなまあたたかい空気は疲労が地面の辺りをまったりと漂うように停留している感じだ。昼間の強い光と混じり合う湿った空気は感覚を強制的に…

ヘンリー・ジェイムス『ねじの回転』

●「ほのめかす」ような表現というのは、しかるべき時に狙いをすまして使われるならば、何かを濃厚に匂わすことが出来るのかもしれないが、核心に迫ることがまったくないままに、ただ「ほのめかす」言い方ばかりが分厚く重ねられ、しかもその「ほのめかし」が…