2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

●四月一日に発売になる「風の旅人」(vol.19「ONE LIFE」)に、「現代生活のなかの絵画」の二回目として、「ひとつの小さな環境」というぼくの書いた文章が掲載されています。「風の旅人」の原稿は、本が出る頃に次の回を書いているという感じなので、この文章…

竹橋の国立近代美術館で藤田嗣治・展

●竹橋の国立近代美術館で藤田嗣治・展。はじまって早々に観に出かけたのは、ぜひ観たかったからではなく、藤田について原稿を書く都合があったから。平日の昼間だというのに、予想外に混んでいて、驚く。展覧会を観て、画家としてのフジタがいっそう嫌いにな…

東京事変『大人(アダルト)』

●ぼくは割合簡単に勘定が高ぶって泣いてしまいそうになるのだが、「泣く」という行為はおそらくとても甘えた行為で、それは人を、親の前でだだをこねているような子供の頃の情景へと退行させる。本当にどうしようもない、圧倒的な強度をもつ、現実の残酷な不…

金柑と夏蜜柑の木

●いつも買物に行くスーパーへの途中のT字路の角の家の庭に、金柑と夏蜜柑の木が並んで生えていて、この冬じゅう鮮やかに黄色い実を垂らしていて、今もまだ、かわらずに実が垂れている。(ぼくは、夏蜜柑は夏に実が成るのだとばかり思っていて、では、あの冬に…

●疲れによるダメージは、少し余裕が出てから、遅れてやってくる。昨日一日ゆっくり休んだおかげで、一気にそれが襲ってきた。ひどい二日酔いみたいな頭痛と重たい肩こり。というか、肩から首、そして頭の内側へとつながる一塊の痛み。それが目の疲労からくる…

●この一週間は、ちょっとハードだったので、今日はほぼ一日寝て過ごし、夕方に新宿までビデオを返しに行っただけだった。友人から強く薦められていた、神奈川県立近代美術館の葉山館でやっている、名前が長くて憶えられない、20世紀初頭に若くして亡くなった…

世田谷文学館に、小島信夫と保坂和志の話を聞きに行った

●世田谷文学館に、小島信夫と保坂和志の話を聞きに行った。世田谷文学館のロビーで、待ち合わせの友人を待つ間、ロビーから見える池で泳ぐ、大きな鯉を眺めていた。池にいる、フナとか鯉とかの動きに、ぼくはことさら釘付けになってしまう。水槽のなかの金魚…

ハワード・ホークス『赤ちゃん教育』

●ハワード・ホークス『赤ちゃん教育』をDVDで。トラウマと言っていいほど強烈な映画体験というのがいくつかあって、この映画を初めて観た時も、そのひとつ。もう二十年も前だが、十代終わりの浪人中で、既に何本もホークスを観ていたし、蓮實重彦のホークス…

●ヘリコプターのプロペラの回転音が空からパラパラと降ってくる。ほとんど静止しているような緩慢な速度で低いところを飛んでいるので、さっきからずっと聞こえつづけている。買い物の帰り道、平坦な道から、次の角を右に曲がると、ゆるい上り坂になる。空は…

緒方明『いつか読書する日』(2)

(一昨日のつづき、ネタバレあり) ●『いつか読書する日』(緒方明)に出てくる田中裕子の家には、本がびっしりと詰まった本棚がある。この本棚の本たちは、田中裕子によって読まれ、田中裕子の生きた時間のなかで蓄積されていったものなのか、それとも、早く亡…

狭い一方通行の通り...

●狭い一方通行の通り。車の流れが滞りがち。赤や黄色や緑のネオンが、点滅し、回転し、ビルの壁面を埋めている。その光を、渋滞する車の車体が反射する。高くて細いヒールで靴音を大きく響かせて歩く人。キャスター付きの鞄をゴロゴロと転がす人。手に持った…

緒方明『いつか読書する日』(1)

●緒方明『いつか読書する日』をDVDで観た。思いのほか、面白かった。しかし、面白いというのと同じくらいの勢いで、疑問や不満を感じた。特に、最後の2、30分の展開は、何でそんな、平気ですべてを台無しにしてしまうことができるのか、という怒りに近い感情…

山下敦弘『リンダ リンダ リンダ』

●山下敦弘『リンダ リンダ リンダ』をDVDで観た。『くりいむレモン』ほどではなかったけど、かなり面白かった。誰もが観る前から想像できる通り、企画としては『スイングガールズ』とか『ウォーターボーイズ』とかの、そのまんまなのイタダキなのだけど、こ…

『マティス 画家のノート』

●『マティス 画家のノート』という本に、1907〜9年頃のマティスの発言が載っているので見返してみたのだが、特に、この時期にタブローにあらたに付け加えられた、線描と、それに伴う塗りの平滑化については、具体的に語っているということはないようだった。…

●一昨日や13日の日記では触れていないのだけど、マティスには、1905年のコリウール滞在の時期の(フォーブ期の)作品から、1907年の『豪奢』などの作品への飛躍との間に、1905 ̄6年頃描かれたとされる『生きる喜び』という作品があるのだった。ぼくはこの絵を…

●必要があって、中古のノートパソコンを買いに秋葉原まで行く。中古といっても、マッキントッシュのノートはそう安くはないし、メインに使っているデスクトップのパソコンとOSやソフトが共通していないと意味がないので、そんなに古い型の(安い)ものにするわ…

『未来少年コナン』

●『未来少年コナン』の1話から10話までをDVDで観た。再放送などで飛び飛びには何度も観ているけど、はじめから続けて観るのは、小学生の頃観た、最初の放送のとき以来だろう。これは宮崎駿の演出家としての最初の仕事であり、その後のすべてが既にここにあ…

●外から、冷たい風が吹く音(いかにも冷たそうな音)、ゴウゴウと唸る音が室内にまで響いてきたので驚く。真冬の木枯らしのような荒れた音。天気予報では、昨日とほぼ同じくらいの気温だと行っていたが、空気が冷え込んで、寒いと言うより冷たいと感じられる。…

ブリジストン美術館の藤田嗣治(2)

(昨日のつづき) ●ブリジストン美術館の充実したコレクションを前にして、日本の近代美術しか観ないのはまったくもったいない話なので、それは、昨日までにしてマティスの話をする。 「コリウール」というタイトルのついた、厚紙に描かれた小さなサイズ(24.5×…

ブリジストン美術館の藤田嗣治

●藤田嗣治について書く都合があって(でも、何をどう書いたら良いのか、とっかかりが掴めなくて)、確かブリジストン美術館に2点ほどあったはずだと思って、とにかく実物を観て考えようと、観に行った。美術館では、フジタは日本近代絵画を集めた部屋に、佐伯…

『寓話』(小島信夫)を半分くらいまで読んだ

●『寓話』(小島信夫)を半分くらいまで読んだ。なかほどに出て来る、浜仲の妹(異父妹)から浜仲へと宛てられた手紙が凄くいい。説明すると面倒くさいことになってしまうのだが、この小説の主人公とも言える浜仲という(父がアメリカ人であるハーフの)男が、アメ…

最近、DVDソフトを買って、何度も繰り返し観ている映画が

●最近、DVDソフトを買って、何度も繰り返し(全体ではなく、断片的にだけど)観ている映画が、ルノアールの『ボヴァリー夫人』とパラジャーノフの『ざくろの色』で、面白くて仕方が無い。これらの映画は、一つ一つのショットが異様なくらい「よく見える」のだ…

ソクーロフの『静かなる一頁』をビデオで

●ソクーロフの『静かなる一頁』をビデオで。これは多分、ぼくがはじめて観たソクーロフで(確か、六本木にあったシネ・ヴィヴァンでやっていたように思う)、観たのはその時以来。ソクーロフは、好きかと言われると、うーん、という感じなのだが、観てみればす…

●♪暖かく、風が流れ出す、と、「曲をシャッフル」にしてあるiPodからオリジナル・ラブの「朝日のあたる道」が流れてきて、身体の緊張がほぐれてくるようなぽかぽかと暖かい陽気のなか、電車に乗って、うつらうつら眠ったり覚めたりしながら(自動的に選択され…

●小島信夫『寓話』を読み始める。まだ、『暮坂』が半分までしか読めていないのだけど、『寓話』の方を先に読むことにした。「序」の部分を読んで、一体この小説のなかにどうやって入り込めばいいのか、と途方に暮れたが、なんとか読みすすめるうちに、ある部…

竹橋の国立近代美術館で須田国太郎・展(2)

●回顧展っていうのは怖い形式でもあると、昨日自分で書いたことへの反省も含めて思う。一人の画家の、初期から晩年までに至る作品が一堂に展示されていると、ついついそこに、ある連続性というか、つまり「物語」みたいなものを読み込んでしまい、まるで、一…

竹橋の国立近代美術館で須田国太郎・展

●竹橋の国立近代美術館でやっている須田国太郎・展を、とても複雑な気持ちで観た。須田国太郎が、とても実直な、良い画家であることは分かる。しかし、「日本の洋画」というマイナーな環境の持つ重力は、学者としてヨーロッパへ留学した経験を持ち、ヴェネチ…

●大量にある、一番最近のドローイングのシリーズから、ささっと4、50点を選んで、カルトンに挟み、こんど展示をする吉祥寺のA-thingsへ持って行き、美術批評家の林道郎さんに、新作はこんな感じなんですけど、と言って観て頂く。前に、A-thingsのオーナーの…

ジョルジュ・アガンベン『開かれ』

●ジョルジュ・アガンベン『開かれ』。難しい本や、なかなかその中に入っていけない本は、はじめから順番に読むのではなく、パラパラと眺めて、面白そうな、入り込めそうな部分だけをいくつか拾い読みして、そこから徐々に、前や後ろに浸食してゆくようにして…

●京都で行われる吉田喜重監督の特集上映のパンフレットのための、『美の美』についての原稿を書いていた。だいたいぼくは事前にきっちり計画を立てたり構成を考えたりして文章を書くことが出来ないので、そこから考えが広がっていきそうな感じの書き出しと、…