2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

青山真治『レイクサイドマーダーケース』(1)

●青山真治の『レイクサイドマーダーケース』をDVDで。この映画はぼくにはあまりピンとこなかったのだが、このピンとこない感じは、この映画が一見してだけでは捉えられないような複数の要素を含んでいるからなのかも知れない、と思わせるくらいには「複雑」…

●夏の夕方。途中から座れたので、電車のなかでいつの間にか眠っていた。どこかの駅に着いた拍子にふと目を覚ますと、急病人発生、急病人発生、というアナウンスが流れ、車両がざわざわしていた。急病人はぼくと同じ車両にいたようで、駅員一人と乗客の男性一…

宮崎駿『風の谷のナウシカ』

●宮崎駿『風の谷のナウシカ』を、十何年ぶりかでDVDで観た。宮崎氏は、時間的に展開してゆく物語を語る作家ではなく、自らが魅了される様々な運動のイメージ(飛んだり、疾走したり、落下したり、爆発したり)のバリエーションを描く作家であり、そのような運…

外に出たくて仕方がなくなる

●真っ白に抜ける磨りガラスの窓からの光で、外の日射しが強いことが分かると、外に出たくて仕方がなくなる。うんざりするようなべとつく暑さやそのための身体のだるさよりも、強い光を目から受け入れる(受け入れたい)ことの高揚感の方が勝つ。端から見るとぼ…

李相日『スクラップヘブン』

●渋谷のシネカノン試写室で、李相日『スクラップヘブン』。これはかなりひどい映画で、駄目な映画だと思う。出来が悪いとか、やろうとしていることが上手くいっていないとか、映画的な才能が云々とか、そういうことではなくて、根本的に駄目なのだと思う。李…

佐々木浩久『血を吸う宇宙』

●佐々木浩久『血を吸う宇宙』をDVDで。ぼくは基本的に高橋洋の脚本の仕事をあまり面白いとは思わないし、佐々木・高橋コンビによる同様の趣向の前作『発狂する唇』は全く退屈だとしか思わなかったのだが、ほんの気まぐれで観たこの映画は案外面白くて、高橋…

(ちょっと、昨日のつづきっぽい) ●以前に何かの本で読んだうろ憶えなのだが、人間の目がものを詳細に見られるのは視界の極めて狭い中心部に限られていて、そのため、視線はつねに細かく動きつづけることで、見ているものの全体像を構成するそうだ。つまり、…

●近所にある古本屋が閉店するそうで、全品半額セールをやっていて、そこで展覧会の図録をたくさん買い込んで、それを眺めていたら一日が過ぎた。買ってきたほとんどが、コンセプトのよく分からない、どこかの美術館のコレクションを適当に(適当に、という言…

●地震があった時は外に出ていて情報もなかったし、そんなに大きな揺れだとは感じなかったのだが、地下鉄の駅に着いたら電車が全面的に止まっていて、そのまま3時間ほど動かなかった。最近、出かける度に電車がトラブルで止まっているところにかち合ってしま…

●買い物に行くためにゆるやかな坂道を下っていて、忘れていたことをふいに思い出したかのように急に、暑い、と意識する。それまで身体のそれぞれの部位がバラバラに感じていた、あまりにも当然のことなので意識に登らなかった様々なものが、その時にひとつの…

風間志織『せかいのおわり』

●京橋の映画美学校第二試写室で、風間志織『せかいのおわり』。これはとても良い。この映画の良さは、「映画」に守られる必要がなく、自分自身(作品自身)の力だけで自ら立つことが出来ているところにあると思う。(例えば『犬猫』はとても良い映画だけど、や…

絲山秋子『逃亡くそたわけ』

●絲山秋子『逃亡くそたわけ』。この小説を読みながらその「逃亡」をやけに切実なものとして感じてしまったのは、これを読む直前にチェーホフの『六号室』を読んでいたせいかもしれない。もっともチェーホフの小説では切実なのは監禁する装置としての病棟(六…

●湿り気が多くてむっとする街中を歩いて駅へ辿り着き、ホームのベンチで額の汗をぬぐい、ホームから見える木々の緑と葉に反射する光を眩しく眺め、手でバタバタと顔に向けて風をおこし、やってくる電車を待ち、開いたドアから冷房の効いた車内に入って席に座…

カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』

●カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロを読んだのは初めて)。読み始めてすぐは、骨ばってギスギスした小説だと感じられた。このギスギス感は、描写が少なくて広がりに欠け(例えば主人公の住んでいるあたりの空間の設定は図式的過ぎるように…

大阪へ行って来た(4)

(つづき、大阪へ行って来た。) ●大阪でいくつか観た展覧会で印象に残っているのは、Studio J(http://www.daikan.ne.jp/studio-j/main.html)というところで観た、名和晃平のエアブラシによるドローイングだった。名和晃平という人をぼくは今まで知らなかった…

大阪へ行って来た(3)

(つづき、大阪へ行って来た。) ●国立国際美術館のゴッホ展は、予想していたとはいえ凄い混み方で、ゴッホの絵は決して大きいものではないので、人がわっと集まると、もうまったく観られない状態になる。これはもう絵を観る環境ではなくて、つくづく、タブロ…

大阪へ行って来た(2)

(昨日のつづき。大阪へ行って来た。) ●大阪で観たものを、挙げておく。万博記念公園で、岡本太郎の太陽の塔。国立国際美術館で、ゴッホ展。MEM galleryで、森村泰昌のインスタレーション「フェルメールの部屋」。Studio Jで、名和晃平のエアブラシによるドロ…

大阪へ行って来た(1)

●大阪へ行って来た。 国立国際美術館が移転したという話は、どこかで小耳に挟んでいるはずなのにも関わらず、大して調べもせず、新幹線で新大阪に着くと疑うことなく万博記念公園へ向かったのは。多分ぼくの無意識が万博記念公園に行くことを欲していたから…

●明日は、出来るだけはやく起きて、新幹線に乗って大阪に行き、国立国際美術館のゴッホを観るつもり。せっかく大阪まで行くのだから、いろいろと他にも計画をたててから行くべきなのだろうけど、とにかく18日で会期が終了してしまう前にゴッホを観ておきたい…

メルヴィル「バートルビー」(坂下昇訳)

●メルヴィルの「バートルビー」(坂下昇訳)を読んでいて、これは黒沢清が映画にしたらとても面白いのではないかと思った。それも、1時間くらいであっさり終わってしまうような。この小説はバートルビーの雇い主の饒舌な語りによって語られていて、バートルビ…

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』

●ぼくはヴァージニア・ウルフはあまり得意ではなく、最後まで読み通した小説は『灯台へ』だけなのだが、『灯台へ』はとても好きで、折に触れて何度も読み返している。はじめて読んだのはたぶん10代の頃で、その頃はヴァージニア・ウルフという名前も知らなく…

『ゴッホの花』(西村書店)

●古本屋で『ゴッホの花』(西村書店)という本をみかけて買った。この本は、ゴッホが描いた絵の、植物の部分だけを勝手に拡大してトリミングして載せてあって、画集としては全然駄目なのだけど、ページをパラパラとめくっていくと、「絵」としてどうだ、という…

散歩をしていると感覚が開かれるように感じるのは...

●散歩をしていると感覚が開かれるように感じるのは、おそらく、とりあえず目的がなく、そして差し迫った身の危険を感じなくても済む状況に置かれていることによってだと思う。そこには特定の方向への注意力の集中がなく、その分、様々な方向へとはり巡らされ…

●アパートから駅まで行く道は、細く入り組んでいて、ずっと住宅ばかりが建ち並んでいる。その途中で、ふと足をとめ、視線を上へと向けた。(この行為は全く無意識のうちにされていて、自分でも何故そうしたのか分からない。)視線の先は、ちょうど道路に面した…

●梅雨時の雨というより、夏の夕立のような雨。カーテンをひいたようにさっと光が遮られ、最初はごく小さな音の、遠くでたった雷の音が徐々に近づいてきて、それとともに空気が急速に湿り気を増す。ポツン、ポツン、と落ちてくる水滴に気付くと、それはすぐに…

想像的な他者と、山田詠実

●「美しい」という言葉を発する時、そこには既に他人との関係への希求が含まれていて、それはたんに、何かを見た時の反応だけではない。例えば、「美しい」という感嘆は、暗黙の前提として、「それを美しいと言ってもかまわない(その「美しい」の用法は間違…

●電話で眠りを中断させられたことによって、頭に残った夢。そこは海が近くて風が強く、空気中にいつも目に見えない霧雨程度の小さな水滴が舞っている。(しかしそれは潮の匂いのほとんどない、さらっとした水滴だ。)濃淡の差はあっても、建物から一歩外へ出れ…

『ソラリス』(スタニスワフ・レム)

●『ソラリス』(スタニスワフ・レム)を読んだのだが、作者や訳者が何と言っていようと、やはりこの小説の一番面白いところはクリスとハリーの関係(と言うか、クリスが、自らに襲いかかってくる、コントロール不能な回帰するイメージ=記憶としてのハリーとどの…

●今日はずっと、ジャ・ジャンクーの『世界』についてのレビューを書いていた。(『世界』というタイトルは、この映画が、北京にある、世界中の著名な建物が十分の一の縮尺で再現されている「世界公園」というテーマパークが舞台になっていることから、つけら…

ギャラリーGANで、牧ゆかり・展

●青山のギャラリーGAN(http://www.presskit.co.jp/presskit/top.html)で、牧ゆかり・展。(観たのは昨日。牧氏の前の展覧会については、この日記の05/01/13と05/01/14で書いています。) 今回の展示は、前回の個展の時のような、端正で完成度の高い作品とはう…